上写真=激しい球際争いを繰り広げた森重真人(写真◎Getty Images)
東京らしいサッカーをしていきたい
丁々発止のバトルが試合序盤から繰り広げられた。FC東京が上海申花のファウルも辞さないラフプレーと挑発に手を焼いたのは事実だろう。10分には相手FWのスン・シーリンに森重が後ろから押されてFKを獲得したが、リスタートを邪魔された。進路を作ろうと相手を手で押したところ、森重は主審からイエローカードを提示されてしまった。
技術力で劣る相手は、あらゆる手段で勝利をつかみに来た。前節の対戦でFC東京はそんな相手に突き合う形になり、結局、勝利をつかみ損ねてしまった。しかし、この日は冷静だった。不満や不服の類を力に変えて、試合を進めていく。森重も以降は努めて冷静にプレーし続けた。
森重はこの日、前節の後半と同様にアンカーを務めた。しかも途中からではなく、先発で。それは相手のロングボールに対応するためだった。FC東京がレアンドロの得点でリードしたあと、上海申花は2人の長身FWを投入し、高さを頼りに攻め込んできたが、慌てず騒がず、2CBの渡辺剛、ジョアン・オマリとともに跳ね返していった。
「相手が大きい選手を送り込んできたので、2センターバックの前でしっかり、ポジションを埋めるということを考えました。もうちょっとスムーズにできたかなと思いますが、初めて(アンカーで)先発したにしてはできたかなと」
森重自身も語るように、そのプレーぶりに違和感はなかった。長谷川健太監督も試合後に話していたが、「エアバトルで負けなかった」ことが勝利につながったと言える。
「難しかったですけど、後ろで受けるときはしっかり受けて、相手が付いてくるので、前線に飛び出すときは前線に飛び出して。まあ、イメージ通りにはできたと思います」
森重は攻撃の局面でもアンカーとしての役割を全うし、そして勝利に貢献した。
重要だった上海申花戦に勝ち切ったことで、チームは自力でラウンド16進出を目指せる状況になった。長谷川監督が以前から腹案として持ち続けてきた「アンカー森重」というカードが奏功した一戦だったと言っていい。
むろん、チームはまだ再開後の1勝を挙げただけ。ネスクトステージの扉を開けるのはこれからだ。大事なのはこの次。中2日で臨む蔚山現代戦になる。
「タフな戦いの中で、点を取って勝つという目的が果たせたのでよかったです。次はまた違う相手なんで、しっかり戦いたい。今日は特殊な相手だったので、やりにくさもあったんですけど、次はしっかりしたサッカーができると思います。中2日ですが、また東京らしいサッカーをしていきたい」
次戦は、グループFの首位に立つチームが相手。従来通り、CBで起用されることになりそうだが、いずれにせよ、アジアの舞台で示す東京らしいサッカーに、森重真人は欠かせないだろう。