上写真=チョン・ソンリョンの守備力が、川崎フロンターレ自慢の攻撃を支えた(写真◎J.LEAGUE)
■2020年11月25日 J1リーグ第29節(@等々力:観衆11,360人)
川崎F 5-0 G大阪
得点者:(川)レアンドロ・ダミアン、家長昭博3、齋藤学
3度目の優勝はとても意味深い
チョン・ソンリョンは優勝が決まった瞬間、初めてJ1で頂点に立ったときのことを思い出したという。
2017年12月2日、大宮アルディージャに勝ち、鹿島アントラーズがジュビロ磐田に引き分けたことで、勝ち点は72で並んだものの得失点差で上回って、チャンピオンになった。あのときも今回もスコアは5-0、会場もホームの等々力陸上競技場だった。
「ホームでみんなで優勝を分かち合うことができてよかったし、結果的にいいゲームができて勝ててよかったです。シーズン序盤から勝ち点を積み上げて首位を走っていましたが、優勝が決まる瞬間はみんなが待っていたものです。勝利した瞬間はすごくいい光景でした。ホームに来てくれた皆さん、来たくても来られなかった皆さん、テレビで応援してくれた皆さん、全員に感謝しています。みんなで楽しい夜を過ごしてください」
そのときと違うのは、自力で優勝を決められたことだ。これでチョン・ソンリョンにとっても3度目のJ1制覇。「3度目の優勝は僕の中ではとても意味深いものがあります。光栄だと思っています」と微笑んだ。
絶対的守護神として、ここまでチームで唯一のフルタイム出場を続けている。超攻撃的なサッカーが今季の川崎フロンターレの最大の武器だが、それは谷口彰悟、ジェジエウのセンターバックコンビと、最後尾に立ちはだかるチョン・ソンリョンで築く壁が、相手にとって高く険しいから具現化するとも言えるのだ。
「今年は監督が求める攻撃的なサッカーの点で、監督の方からもトライしてくれという言葉がありました。そういう部分をグラウンドで見せられたことはよかったと思います」
この日も無失点。ボールを支配下に置いておく時間が長いから、チョン・ソンリョンの出番は多くはないかもしれないが、いつか来るそのときのために備えが必要だ。
「フロンターレのサッカーは攻撃的なのでボールが来ないときもありますが、常にボールが来て、ピンチが生まれることを準備してブレずにやってきた成果だと思います」
大差がつくと緩みがちになるが、このチームにはそれがない。95分、G大阪が意地を見せ、渡邉千真が最終ラインの裏に浮き球のパスを送ってきて、パトリックが抜け出して右足で流し込もうと狙った。チョン・ソンリョンは焦らず前に出て、シュートを右足でブロックしてみせた。
「今日も全員がハードワークして、前から後ろの選手までが最後まで無失点で終わろうという気持ちが強かったと思います。本当によかったです」
GKの試合中のハードワークは目に見えにくいが、個人の細かい技術を磨くところにフォーカスしてきた。
「監督の求めているチャレンジは、ポジション的なことやセットプレーのところもあります。そういうところでチャレンジしながら力をつけて、一つずつ階段を登ってアップグレードできたと思っています」
「もともとできていたプレーよりも少しずつ成長したと思います。今後ももっとトライしてチャレンジをしていきたい。個人的にもまだまだ成長できることを実感するシーズンになっています」
次の目標はすぐそこに迫っている。中村憲剛とともにもう一つのタイトルへ。
「一緒にサッカーができて光栄です。(引退は)すごく残念ですけど、天皇杯が最後なので気持ちを一つにして最後までいければいいと思っています」
もちろん、準決勝も決勝も自らのセーブで無失点に抑えるつもりだ。
取材◎平澤大輔 写真◎J.LEAGUE