明治安田生命J1リーグで川崎フロンターレが優勝を決めた。その瞬間のピッチに、中村憲剛もいた。愛してやまない等々力陸上競技場で、仲間に深く感謝する40歳のリビングレジェンドの笑顔が弾けた。引退を宣言したシーズンのハイライト。

上写真=優勝のシャーレを掲げてサポーターとともに。中村憲剛、40歳の王者!(写真◎J.LEAGUE)

■2020年11月25日 J1リーグ第29節(@等々力:観衆11,360人)
川崎F 5-0 G大阪
得点者:(川)レアンドロ・ダミアン、家長昭博3、齋藤学

すべての人に感謝したいと思います

 涙はなかった。

「最高です。最高以外の何ものでもない。こんなに幸せな40歳でいいのかというぐらい!」

 引き分け以上で優勝のビッグチャンス。ホームに帰ってきて、等々力で決められる。その試合で鬼木達監督から呼ばれて中村憲剛も出番を得た。4-0と大量リードの状況で、大島僚太に代わってピッチへ飛び出していったのは、86分。

「もうちょい早く出るかと思ってました。オニさん、ためたなあ、と(笑)。でも、うれしかったです。(鬼木監督も中村も)どちらも笑顔でしたね。本当に感謝です」

 ピッチを去る大島からは、キャプテンマークを託され、左腕に巻いてもらった。

「守田(英正)に渡すべきだと思ったんですけど、僚太が巻いてくださいって言ったので。僚太が入ってきた頃のことを思い出しましたし、成長する姿を見てきたから、あのときだけは感動しましたね。いろんなことを考えられる優しい子ですよね。選手としても素晴らしいですし、彼がいるから僕もここ5年ぐらいで輝けたと思っているので、僚太に感謝しています」

 成長に目を細めたのは、大島にだけではない。

「今季で引退と自分で決めたけれど人に言わないでスタートして、ケガでいない間に後輩たちが強いフロンターレを見せてくれました。オレは乗っかっただけ。フロンターレなので、ここに戻ってくるのは簡単じゃないのは分かっていて、それをクリアして戻っていくということで自分も成長できました。みんなのおかげです。40歳で引退の年にシャーレを掲げられて幸せです。すべての人に感謝したいと思います」

 苦しいシーズンだった。前十字靭帯断裂の大ケガからの復帰、新型コロナウイルス禍でのリーグ戦。しかし、「リーグが再開するときにオニさんが、こういうときだからこそ、元気や勇気を出して喜んでもらおうと言ってくれて、それで火がつきましたね」とハートが震えた。

 リーグを制して、次の目標は天皇杯優勝。プロフットボーラーとしての中村憲剛にとって、最後のタイトルになる。今度は中村自身が、頼もしく成長した後輩たちの心を奮い立たせる番だ。

「ルヴァンカップで負けてしまったけれど、リーグの優勝と天皇杯優勝の目標があるので、次に進んでいきます」

 優勝の喧騒に包まれながら、残り1カ月と少しとなった現役生活のもっと最高なフィナーレに向けて、気を引き締めるのだった。

現地取材◎平澤大輔 写真◎J.LEAGUE


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