明治安田生命J1リーグで王手をかけた川崎フロンターレ。勝てば優勝の大分トリニータ戦に敗れたが、次のガンバ大阪戦では引き分け以上で王者になれる。ルーキーとして存在感を示した旗手怜央は大迫力の推進力で栄冠をつかみ取る。

上写真=旗手怜央(左)は三笘薫(右)という最高の仲間でありライバルとともに、川崎Fの新時代を築いていく(写真◎Getty Images)

比較はせずに、自分は自分

 旗手怜央は「彼」を刺激にはするが、比較はしない。

「いろいろな人に言われますね。意識していないわけではないけど、一緒にプロに入った選手が結果を残していてすごいと言われているので刺激になりますけど、ポジションもプレースタイルも違います。比較はせずに、自分は自分だとやってきました。これからもそうやっていきたいと思っています」

 同期の三笘薫が大ブレイク、12ゴール、6アシストはともにリーグのランキングで7位だ。旗手は5ゴール4アシストだから、こちらもルーキーとしては十分な貢献度である。最高の仲間であり最高のライバルに恵まれた。

 スラロームのようになめらかで、ひょうひょうと左サイドを突破する三笘に対し、旗手は重厚感あふれる推進力が武器だ。

「自分の持ち味はゴールに向かうプレーやシュートで、守備であればハードワークです。持っているプレーを出すところに尽きると思うので、特徴を生かせるようにしていきたいです」

 そうやって1年目から貢献できた理由はというと「分からないですね」と首を傾げる。分からないほど無我夢中にいるというそのこと自体が、すでに答えになっているのかもしれない。「ただ、持ち味を表現できていたのは、出ていることにつながっているとは思います」とも話しているから、自分を出すという集中力の一点に尽きるのだろう。

 強引にでも前に出ていく推進力や、できることに全精力を注ぐ鋭敏さは、前節の大分トリニータ戦でも表れていた。勝てば優勝という大事なゲームで、わずか34分で谷口彰悟が退場、難しい展開になったが、川崎Fらしい攻撃サッカーを貫かない理由はなかった。

 旗手は60分にピッチに入り、4-3-1-1の基本的な配置の中で最初にFWで、次に右サイドバックに移って最後は右MFでプレーした。30分強の中で目まぐるしく役割が変わる戦いで、何を意識したのだろうか。

「どのポジションでもゴールにつながるプレー、自分が決めることやアシストすることを常に考えてプレーしました」

 旗手を投入するということはつまり、攻撃のギアをさらに上げていく合図だ。

「最初、右サイドバックにと言われたときは、(押し込んでいる)展開もそうだし、自分の推進力を考えたときに、あの時間ならあり得るのではないかと開き直って考えていました。だから動揺せずにすんなりやれてよかったです」

 確かにその推進力はサイドバックとしても魅力的だった。サイド攻撃がみるみる活性化していく。

「自分の中でもモヤモヤしている部分もありながらも、大分戦ですっきりした部分も多くて、自分の良さが出たシーンがたくさんありました。サイド攻撃の活性化につながったんじゃないかなと感じています」

 そのモヤモヤの中身については「言いたくないので、ごめんなさい」と笑ったが、「これまでもっともっと決めるところはたくさんあったので、まだまだやれるんじゃないかというのが自分の中ではあります」と明かす。ならば、次のG大阪戦に勝って、しかも自らの今季6ゴール目で優勝を決めることができれば、モヤモヤはきれいさっぱりすっきりするに違いない。


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