上写真=鬼木達監督が優勝をその手につかむまで、もう少し(写真◎Getty Images)
「次でいいとかそういうことは一切考えていません」
川崎フロンターレは大分トリニータに勝てば優勝。引き分けか負けでも、翌22日にガンバ大阪が浦和レッズに勝たなければ優勝。それが条件だ。そして、5試合を残したこのタイミングで決まれば、J1史上最速優勝になる。
ここはやはり、自分たちの力でつかみ取りたい。鬼木達監督はもちろん、その意欲を隠しはしない。
「それは常々、選手に言っているし、自力でタイトルを取れるチャンスがあればチャレンジしていかなければいけないですよね。次でいいとかそういうことは一切考えていません。ちょっとしたスキがタイトルに届くか届かないかになってくることはこの何年かで分かっているので、勝ち点が離れているからといって緩みはありません」
ここまで10連勝、12連勝と記録を2度も打ち立て、得点74、失点24はもちろんどちらもリーグで一番いい数字だ。
「いままでやってきたことの積み重ねですから、大事なゲームのときはやるべきことをやりなさいと話しています。それはハードワーク、得点を貪欲に目指し続けるところですね。言葉で言うと『全員攻撃・全員守備』と当たり前になってしまうけれど、それを体現していくこと大事です」
当たり前だから大事だし、当たり前だから難しい。派手な戦いでのし上がってきたように見えて、そこをていねいにこなしてきたからこその現在地だ。
王手をかけたのは、11月18日の横浜F・マリノス戦で3-1で勝利を収めたから。ただ、相手が退場して1人少なくなってからなかなかゴールを割れず、ようやく90分と90+5分に連続ゴールが決まって突き放した。
「前半で相手が1人減って、様子を見ながら後半に入ることできましたけど、様子を見るということが強気につながったかどうかというと、そうではないと思います。相手のカウンターは脅威だったけれど、それでやられたらそれはそれなんですよ。その前に勝ち切ろうとする姿勢を全面に押し出すことが、我々のやるべきことでした」
1人少なくなった方が逆に狙いがシンプルになって活性化するのは、サッカーではよくあること。それをケアしながらの試合運びになったと鬼木監督は見ている。そして、それはあるべき姿ではない、とも。
1年を通して、「強気」はキーフレーズになった。選手にも、そしてもちろん自分自身にも言い聞かせるように、強気に戦えたかどうかを基準に自己評価を繰り返してきた。
「そんなに毎年変わらないですけど、自分の仕事は決断と覚悟だといつも思っていて、今年は過密日程でもあったのでそこをどんどんしていかなければいけませんでした。研ぎ澄まされる感じは自分の中でもあって、言葉では説明できないですけど感覚的なところは得たのかなと。いつもいろいろなところで自問自答しながらやっていますけど、何かを決断するときに覚悟を見せなければいけないと思ってやっているところです」
選手だけではなく監督も日々、成長していく。優勝することで、それが「本物」になるのだろう。そのときまで、あと少し。