横浜F・マリノスの高野遼にとって、プロになってから順風満帆なシーズンは、まだない。今シーズンも負傷に見舞われたが、13日にオンライン取材に応じ、取材陣の質問に応えていく表情には余裕が感じられた。

上写真=度重なるケガを乗り越えた高野遼は、ここから自身の力を発揮したいと語る(写真◎Getty Images)

26歳はケガをしないように

 小学生時代から横浜F・マリノスの一員としてプレーし、ユースまで到達した。最短距離での昇格はかなわなかったが、日体大を経て憧れのトップチームでのトリコロールのユニフォームを手にした。ただし、日体大在籍時には特別強化選手として、横浜FM入りの前に湘南ベルマーレでプレー。横浜FMに正式加入した半年後には、甲府へと期限付き移籍した。まったくもって一筋縄ではいかないキャリアである。

 昨季に横浜FMに復帰したものの、開幕直後に全治8カ月の負傷を負い、やはりキャリアは波乱万丈だった。だが、いや、だからこそ、納得いかない状態で迎えたアニバーサリーにも、高野遼は冷静だった。

「去年もケガしちゃって、今年もケガしちゃったんで。26歳はケガしないように」

 ホーム最終戦となる浦和レッズ戦前日の13日、高野は26歳のバースデーを迎えた。

 前述のとおり、昨年3月に負った右ひざ前十字靭帯損傷は全治8カ月と診断されたが、昨年9月28日のJ1第27節ベガルタ仙台戦で先発にて復帰を果たしている。そして今季は開幕戦から途中出場を果たしたが、コロナ禍、さらに再びの負傷で戦列を離れ、まだリーグ戦は10試合の出場にとどまっている。9月30日の第25節サガン鳥栖戦では、先発しながら開始10分で負傷によりピッチを退いた。

「試合に出させてもらって数試合できた中で、個人としてはもっともっとできると思っていたので、そのタイミングでのケガというのはすごく悔しい」。そう回想したが、すでに過去は引きずってはいない。

「焦ることもなく、とにかく地道に治していこうと考えていました。ケガをしたからといって、頑張ってすぐ治そうというのも特にないし。去年、もっとでかいケガしたので、別に大したことはないと思っていました」

 本人によれば、練習も問題なくこなせており、順調に復帰の道のりを進んでいる。

「ケガ明けなので、コンディションの部分が一番大きいのと、試合勘も少なからず落ちていると思うので、Jリーグでの2試合でチャンスがあれば、そういうのを呼び戻すというか、調整して、万全な状態で行きたい。この2試合、全力で取り組んでいきたいと思います」

 浦和戦、川崎F戦を終えると、チームはACLに向かう。短期集中の決戦だ。遠征メンバーは未発表であるものの、国内での戦いにせよ、ACLに臨むにせよ、ここからはまさに総力戦になる。

「得点の部分で、どんどん絡んでいきたいと思っている。復帰しても、その部分で貢献していきたいなと思います」

 今季リーグ戦初の先発ではあまり存在感を示せず、しばらくメンバーを外れたが、左サイドハーフで起用されると、積極的な姿勢で出場機会を増やしていった。ぶつかるたびに、壁を乗り越えてきた男だ。

 確かに、高野は一回り大きくなった。

取材◎杉山 孝


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