上写真=ルヴァンカップ決勝が後日開催になったが、安部柊斗は切り替えはできているという(写真◎F.C.TOKYO)
「東京らしさが戻ってきましたね」
FC東京にとっては突然の「中10日」となった。11月7日に予定されていたルヴァンカップ決勝が、対戦相手の柏レイソルに新型コロナウイルス陽性者が認められたことで中止(代替日は決まり次第発表)、次の11日の北海道コンサドーレ札幌戦までしばらく調整の時間になった。
安部柊斗は「決勝に向けてチーム全体でモチベーションの高い中で維持できていました」と気持ちの高ぶりを明かしたが、「延期という形になってしまいましたが、残念だがこればかりは変わらないので、みんなで切り替えて札幌戦に向けていいトレーニングができました」と充実感を漂わせる。
「今年、こんなに試合の間が開いたことがないので、チームでのすり合わせができましたし、コンディションを高める日も何回かあったので、上がっています。自分としては試合をやっていった方が上がるんですけど、初めての試合がない週になったので良かったと思います」
と話して、いまにも走り出しそうなパワーを感じさせるのだ。
直近の試合は10月31日の川崎フロンターレ戦。1-2で敗れてしまったが、安部は57分にていねいなパスでディエゴ・オリヴェイラの同点ゴールを導いている。
「まず(中村)帆高からもらったんですけど、トラップした瞬間にディエゴが動き出したので、そこに簡単につけるだけでした。あの動き出しをしてくれると出す側としては出しやすいですね」
距離的には自らフィニッシュも狙えたが、「まずゴールを見ようと思ったんですけど、ディエゴが動いたのが先に見えたんです。だから自分で打つよりもディエゴに出しました」と冷静だった。はっきりとした動きでボールホルダーにパスを促すアクションが、そしてそれを見逃さない視線がいかに大切かを教えてくれたシーンだった。
それは川崎F戦の前に行った選手だけのミーティングの効果でもあったかもしれない。
「(川崎F戦の2試合前の)マリノス戦の後半から良くなくて、そこから選手だけのミーティングもあったので引き締めて川崎戦へ向かいました。負けましたけどチャンスもあって、決めきるところで決めていれば勝っていた試合だと思います。東京らしさが戻ってきましたね」
そのミーティングではキャプテンの東慶悟から「最近、東京のサッカーができていない」という意見が出て、「外国人も含めてみんなで話せて、若手からもベテランからもほぼみんなしゃべれたのでいい機会になった」とコミュニケーションの深化を実感している。川崎F戦のアシストはその賜物かもしれない。
選手ミーティングで中心になった東が、負傷からようやく帰ってきた。精神的支柱の復帰はチームにとって大きい。安部にとっても頼れる先輩のカムバックであるのと同時に、ポジションを争うライバルの登場となる。
「慶悟くんが帰ってきて雰囲気はやっぱり違いますし、同じようなポジションでもあるので、復帰してすごく短い期間でも見習うプレーはたくさんあって、素晴らしい選手だと感じているので、一緒にプレーしながら吸収していきたいと思います」
確かに、球際に強く、運動量が豊富で、激しい守備から一気に前線に飛び出してゴールを襲うなど、共通点は多い。ここまでの活躍に、東のエッセンスを加えたプレーを、まずは次の札幌戦で披露したい。
「東京らしさを出すために、球際で負けない、とか、相手よりも走る、という部分を大切にやっていけばチャンスは来ると思うので、やるべきことをやらなければと思います」
残念ながらリーグ戦は現在4連敗中。札幌、名古屋グランパス、ベガルタ仙台と続くリーグ戦3試合のあとにはアジア・チャンピオンズリーグが控えている。連敗阻止、アジア王者への戦いの準備、そしてなにより1試合ずつ勝利を重ねていくこれまでの戦いを続けるために、まずは札幌戦に全力で挑む。