上写真=遠藤康こそ大逆転勝利の立役者。流れを引き戻し、逆転弾も決めた(写真◎J.LEAGUE)
■2020年11月3日 J1リーグ第31節(@日産ス:観衆20,515人)
横浜FM 2-3 鹿島
得点者:(横)水沼宏太、エリキ
(鹿)上田綺世、エヴェラウド、遠藤康
「力が入ってもいいことないので」
鹿島アントラーズが大逆転勝利を収めたのは、間違いなく遠藤康の存在があったからだった。
17分、27分と前半早々に2点を先行されながら、上田綺世が決めて前半のうちに1-2とした。後半は圧倒することになるのだが、そのきっかけは間違いなく後半から入った遠藤。
ザーゴ監督は前半、高い位置でボールを収められずに、攻撃に必要な時間を作ることができていないと判断し、後半開始から遠藤を投入した。すると、前半はあれだけ苦労したチームが、魔法にでもかかったかのように攻めに攻めていく。
「前半は(三竿)健斗と一緒に見ていて、パスの距離が遠いなと思っていて、遠いとリズム良くできないしいいサッカーにならない。だから、入ったら距離を近くしてリズムを作ろうと意識した」
効果はてきめんだった。
「攻撃全部が前に、前に、だと後ろが追いつかないし、2次攻撃、3次攻撃ができなくなる。使いどころというか、行かないところは無理してまで行かないとか、しっかり保持する時間を作って攻撃する。90分を考えながらやるのがサッカーだと思うので」
こうして78分にエヴェラウドが豪快なミドルシュートで2-2の同点とすると、84分には遠藤が試合を決めるのだ。右サイドのスペースに伊藤翔が出ていくと、中央で突っ込んだエヴェラウドと時間差をつけるようにしてその後ろに入った遠藤へマイナスの浮き球が送られてくる。小さくステップを踏んで下がりながらタイミングを合わせると、ほどよく力の抜けた、遠藤らしい左足のボレーシュートをゴール右に送り込んだ。
「力が入ってもいいことないので、練習通りですね」
殊勲のプレーをさばさばと振り返るのは、チームとしての試合内容に首を傾げることがあるからだ。
「勝ったことはもちろん良かったですし、今後に向けては逆転できて良かったけれど、前節と今日の前半は特に戦い方が変わっていない。いいサッカーができていないとやってても見ている人も感じてたと思うんで、結果的に勝ったけど、毎回こういう試合だと安定していかない。結果はいいけど、勝ち方が心配で」
反省が生かされていない、という自分たちへの警告だ。残り6試合でそれを生かすことができるかが、上位進出のカギを握るかもしれない。
取材◎平澤大輔 写真◎J.LEAGUE