上写真=立正大4年生の平松昇は来季の湘南加入が内定しているMFだ(写真提供◎関東大学サッカー連盟/飯嶋玲子)
遠慮せずに最年長選手に話しかけた
柔らかいタッチですっとボールを収めて、前を向く。次の瞬間、敵陣の穴を見つけ、すかさず得意の左足でひと仕事こなす。ワンツーを駆使して中央突破からゴールに迫り、スルーパスでも好機を演出。関東大学1部リーグでは、その存在感は際立っている。立正大のMF平松昇は、すでに湘南ベルマーレに内定している技巧派レフティー。特別指定選手として今年9月にJリーグ・デビューも果たした。
今夏は約2カ月、湘南の練習に参加し、多くのことを積極的に吸収してきた。チーム練習が終われば、すぐさま石原直樹のもとに駆け寄っていたという。
「ずっとJリーグのトップレベルでやってきた選手です。どういう考え方でプレーしているのかを知りたかったんです。同じフォワードなので、勉強になると思いました」
石原はチーム最年長の36歳だったが、ためらいはなかった。どこまでどん欲なのだ。
「これはチャンスだと思い、積極的に話しかけにいきました。一番長い時間、話していたと思います。サッカーの細かいところまで聞き、考え方の幅が広がりました」
プロ18年目を迎えるベテランのアドバイスは的確だった。素直にうなずけた。
「もっと相手を見たほうがいい。技術のある選手は自分のイメージだけでプレーしてしまうから」
いくつも思い当たる節があった。大学に戻ってからも、石原の言葉を胸に留めている。急激に変わることはできないが、毎日意識することで徐々に修正していきたいという。プロサッカー選手と毎日のように練習し、生活のサイクルに触れることで刺激も受けた。
「厳しいプロの世界を知り、自分の中であらたな基準ができました。いまは高い意識を持って、生活を送り、練習に取り組んでいます」
清水エスパルスのアカデミーで育ち、立正大で大きく成長。入学当初は2部リーグでプレーし、脚光を浴びるような存在ではなかった。それでも、昨季は初めて1部リーグを経験し、実力をあらためて証明した。小柄ながらテクニックは本物。左足のキック精度は高く、武器もある。何よりも向上心にあふれている。
湘南にぴったりの逸材である。残りの大学生活でさらにパワーアップし、プロの舞台でも大暴れするつもりだ。
取材◎杉園昌之 写真提供◎関東大学サッカー連盟/飯嶋玲子