上写真=汰木康也が左サイドを独特のリズムで切り裂いていった(写真◎URAWA REDS/J.LEAGUE)
■2020年10月24日 J1リーグ第24節(@埼スタ:観衆12,863人)
浦和 3-1 C大阪
得点者:(浦)興梠慎三、山中亮輔、マルティノス
(C)豊川雄太
「いいサイクルになってきている」
28分にセレッソ大阪に先制されたこのゲーム、逆転劇の始まりは背番号24、汰木康也、その人だった。
まずは、ペナルティーエリアの中、左で武藤雄樹の縦パスを受けてそのままするりと縦に抜け出たところで倒された。PK獲得。これを興梠慎三が確実に決めて34分に追いついた。
44分に山中亮輔が決めて逆転すると、今度は71分に、左サイドのコーナー付近からゴールラインをなめるようなコースを取って中に持ち運び、マイナスへ。レオナルドがシュートしたこぼれ球をマルティノスが押し込んで3-1とした。今季、ホームでなかなか勝てない中で、前節でベガルタ仙台を粉砕し、今度は2位の強敵C大阪に逆転してようやくの本拠地連勝だ。
特に、逆襲ののろしを上げることになったPK獲得は大きいだろう。先制されたわずか6分後だから、流れを完全に明け渡さずに済んだという点で大きな意味を持った。
「最初は打とうと思ったんですけど、相手に当たりそうだったのでもう一つかわして打つか中に合わせるかと思って、直感で抜けたら倒されたという感じです」
インスピレーションが研ぎ澄まされていたのだ。
10月10日の第21節サガン鳥栖戦、今季初ゴールが、1-0の勝利に導くアディショナルタイムの劇的な決勝弾だった。そこから3試合連続で先発。「ゴールを取れたことで気持ちに余裕が出てきて、プレーでも連係ができてきて、また余裕ができる、といういいサイクルになってきていると思います」と好リズムの実感を存分に楽しんでいる。
その連係面では、前線に入る興梠と武藤との関係がスムーズになってきた。
「ゴールやアシストという目に見える結果はまだ物足りないと感じますけど、ペナルティーエリアに入っていく回数は増えましたし、試合を重ねるごとに(興梠や武藤と)いままで以上に感覚で感じながらプレーできています」
理屈を超えて感覚で、と胸を張って言えるのは、やはりうまくみ合っているからこそだろう。
「二人とも動く選手なので、パスが合わないシーンが多くて慣れるまで時間がかかりました。最近やっと、こういう風に動くのか、とか、どのスペースに入りたいのかを感じるようになってきて、感覚が合っていくシーンが増えてきたと思います。二人もたぶん、自分のドリブルのコースとか分かってきてくれたと思います」
ただ一緒にプレーするだけで即興的に響き合うというものでもない。長年培ってきた興梠と武藤のユニットに汰木が違和感なく入っていけるまでに、相応の時間は必要だったのだ。だが、もう大丈夫だろう。感性で分かり合えるトリオが好調レッズの象徴になりつつある。
「成長できなかったら先はないです。最近のプレーでは良さを出せていると思いますけど、もっとゴールに絡みたい気持ちがありますから」
ようやく覚醒の時を迎えたドリブラー。確固たる地位を築くまで、さらに貪欲にゴールへと突き進んでいく。
取材◎平澤大輔 写真◎URAWA REDS/J.LEAGUE