上写真=好セーブを連発してチームを決勝に導いたGKキム・スンギュ(写真◎J.LEAGUE)
■2020年10月7日 JリーグYBCルヴァンカップ準決勝第(観衆4,785人/@ニッパツ)
横浜FM 0-1 柏
得点:(柏)山下達也
ビッグセーブでチームを救い、決勝に導く
「やはり強いチームの中には良いGKが必要」
そう言ったのはネルシーニョ監督だった。
だから、この日の柏は強かった。優れたGK、キム・スンギュがいたからだ。そのプレーは大げさではなく、神がかっていた。
印象的なビッグプレーを挙げてみる。
23分、小池龍太の右足の強烈なミドルシュートをパンチングで逃れた。
31分、マルコス・ジュニオールが左サイドから浮き球でパスを出し、落下地点に素早く動いた前田大然のダイレクトシュート。しかし距離をしっかり詰めてストップ。
40分、ボックス内でエリキとのワンツーでフリーになった前田が右から左足で狙うも、至近距離でセーブ。
50分、ティーラトンがボックス左からの折り返しをゴール正面で扇原が強振。だが、冷静にパンチングで防ぐ。59分にはティーラトン強烈なシュート、61分には扇原の反転シュートを冷静に防いだ。
70分、天野純のパスからエジガル・ジュニオに狙われたが、鋭い反応でゴールラインは割らせなかった。圧巻は、残り15分を切ってからだ。高い集中力でキム・スンギュはゴール前に立ちはだかった。
76分、ティーラトンのクロスをドンピシャのタイミングでエリキに頭で合わせられたが、鋭い反応でストップし、83分にはエジガル・ジュニオの強烈なシュートを右手一本で外へとはじき出した。88分のオナイウ阿道のヘッドもビッグセーブで弾いてみせた。
GKの好セーブには得点と同様の価値があるとはよく言うが、この日のキム・スンギュの好セーブの数々をゴールに置き換えたとしたら、いったい何点、取ったことになるのか。ダブル・ハットトリックでも足りないだろう。
結果、柏は前半にCKから山下達也が挙げた1点を守り切ることに成功し、横浜FMを下して決勝に駒を進めた。勝利をつかみ取ることができたのは、ディフェンス陣の集中した守備とキム・スンギュの働きがあればこそだ。
「個人的にも決勝に行きたいという気持ちは強く持っていました。チームとしても今日に向けて良い準備をしてきたので、良い結果を得られてうれしく思います」
勝利の立役者は事も無げに試合を振り返った。その落ち着きがチームにまた安心感を与えているのだろう。
「彼の今日の役割、活躍は決してサプライズではない。経験があって、クオリティーの高い選手であることはみなさんもご存じの通りです。過去2年間一緒に仕事をした経験がありますが、とても競争力があって、チームのために献身的に戦える。その上、柔軟性もあります。今日の試合ではいくつもあった相手の決定機を阻止してくれて、非常によくやってくれたと思っています」
神戸時代にも共に仕事をしたネルシーニョ監督は称賛を惜しまなかった。
7年ぶりの決勝進出がかかった大一番。柏レイソルのゴール前には文字通りの守護神が、いた。
取材◎佐藤 景 写真◎J.LEGUE