上写真=今季初先発の丹羽がセンターバックに入りフル出場。チームを引き締めた(写真◎J.LEAGUE)
■2020年10月4日 J1リーグ第20節(@BMWス:観衆4,691人)
湘南 0-1 FC東京
得点:(東)アダイウトン
「サッカーって楽しいものだし」
34歳のベテランが今季初先発だ。FC東京のセンターバック、丹羽大輝がJ1第20節の湘南ベルマーレ戦でフル出場。1-0というタイトなゲームを無失点で乗り切った守備陣の中心になった。
3日後に控えるJリーグYBCルヴァンカップ準決勝の川崎フロンターレ戦を見据えて、FC東京は前節から先発の11人をすべて入れ替えるターンオーバーを敢行。さらには、エースのディエゴ・オリヴェイラを前半のみで交代させ、今季初出場となる矢島輝一、宮崎幾笑を途中から起用、9月に特別指定選手に承認されたばかりの明大4年生、蓮川壮大を83分から送り込んでJデビューさせ、今季2試合目の平川怜も送り出す90分。これがJ1で158試合目の出場となるベテランが奮起しないわけはない。
「(バングーナガンデ)佳史扶にも言ったんですけど、サイドを割られても僕のところとかジョアン(オマリ)とか(波多野)豪が最終的には弾き返せば問題ないから、思いきってプレーしてほしかったんです。守備のことを考えずに(中村)帆高も佳史扶も高い位置を取らせたかったので、前向きな気持ちでサポートしたかった。だから、僕とか後ろの人間が守ればいいかなと。それぐらいの覚悟を持ってプレーしていました」
左サイドバックのバングーナガンデも右サイドバックの中村帆も、まだ若い。彼らを導くメンターのように落ち着きを与えていった。
とはいえ、「自分のことで精一杯だった」と笑ったように、ここまで9月9日の第15節横浜FC戦で89分から出場しただけで、これが今季初先発だった。でも、心は平静だった。
「いつチャンスが来るか分からない状況の中で戦える準備、試合に出る準備をしていて、それが今日でした。普段の生活が試合に出ると思っていたので、落ち着いてプレーできました。若い選手が多いですけど、年齢やキャリアは僕のほうが長くても34歳というのは初めての経験で、ある意味、新人。だから、34歳の新人として楽しみながらプレーしていました」
「とにかく、楽しんでやろうと。だって、サッカーって楽しいものだし、失うものも何もないので、当たって砕けろじゃないですけど、相手のことも気にならなかったですし、どの相手でも、どの味方でも、自分らしさを前面に出して後悔しない90分を意識していました」
パートナーとしてコンビを組んだジョアン・オマリとは会話を重ねてこの日に備えたという。
「普段から馴れ合いにならないというか、強度の高い練習をしていて、ファウルかファウルではないかというぐらいのトレーニングを積んでいるので、そこが出せたかな。ジョアンとは英語でコミュニケーションを取りながら、試合の2日前も前日も、それに今日もホテルでずっと話していました。センターバックはほんのちょっとした数センチのポジショニングのズレで失点してしまうポジションなので、ジョアンと話しながら準備していたことも出せました」
そしてやっぱり、若手の活躍には目を細めてしまう。
「うれしいですね。チャンスをもらえない選手が出て結果を出して、これでチーム力も上がります。みんなトレーニングで頑張っているし、そういう選手が出て活性化することはいいことです」
この勝利は、長谷川健太監督にとってはJ1で通算200勝という記念になった。ガンバ大阪でもともに戦った師弟関係だけに、思いも強いだろう。
「いま初めて知りました(笑)。いま聞いて、結果として勝ててよかったと思います。ロッカーでは何も話は出なかったですね。誰もアナウンスしなかったし。いまからバスでおめでとうって言います」
そう言って、苦しい試合をともに戦い抜いた仲間のところへと帰っていった。
写真◎J.LEAGUE