今季、出場機会が減少している浦和レッズの柏木陽介があらためて存在感を示し、停滞する攻撃に自らのプレーで可能性を示し、同時に警鐘を鳴らした。シーズン後半戦、背番号10はプレーと言動でチームを変えていくつもりだ。

上写真=攻撃面で際立った存在感を示した柏木陽介(写真◎Getty Images)

■2020年9月26日 J1リーグ第19節(@埼スタ/観衆6,401人)
浦和 0-2 横浜FC
得点:(横)松尾佑介2

リズムを変えたからって、なんや(柏木)

 背番号10が入ると、浦和レッズのサッカーが変わる。攻撃のテンポがよくなり、ぽんぽんとパスが回る。状況に応じて中盤でタメをつくり、スローダウンすることもできれば、スピードアップもできる。自由自在である。守備の強度を考えれば、チーム内のほかのライバルに劣るかもしれないが、絶妙なタイミングで繰り出すパスには別格のセンスがにじむ。0-2で敗れた横浜FC戦でも、その存在感はキラリと光った。

 前半は右サイドハーフに入り、中央寄りにポジションを取ってプレー。相手の間でうまく受け、すっと前を向いてチャンスをつくった。狭いスペースでもお構いなし。開始7分にはエリア近辺でパスを受け、相手の背後に柔らかいパスをぽんと落とす。レオナルドとの連係が深まってくれば、さらなる好機が生まれる予感を感じさせた。

 そして、本領発揮は後半から。ボランチにポジションを移すと、中盤の底からパスを散らし、攻撃を組み立てていく。相手が引いて守っていたこともあるが、ゲームを支配し、次から次にチャンスを演出。それでも、本人は手応えよりも問題点を強調していた。

「点には絡めなかった。そこは課題。リズムが変えたから、なんやって。点を取りにいくぞ、というところまで持っていかなといけない。まだまだ足りへんな、と感じている」

 ゴールに直結するプレーがなかったのは事実。無得点で敗れ、ホームの埼玉スタジアムには重苦しい空気が流れていた。

 ただ、ネガティブな要素ばかりではない。これまでにほとんどなかった攻撃の形が見えたのは事実だろう。79分、ボランチの柏木からレオナルドに縦パスを入れ、そこからワンタッチで興梠慎三につないだ一連の中央突破は、可能性を感じさせた。サイド攻撃一辺倒では、相手の分析も進んで難しい。

 シーズン後半戦、大槻レッズの真価が問われるなか、背番号10の起用法はカギを握っているかもしれない。本人は出場機会が減るなかでもどかしさや悔しさを感じつつも、チームのことを最優先に考えていた。

「チーム全体的に仲間のためにスペースを空けたりする(おとりの)動きが足りない。自分が点を取りたい、自分はここでほしい、というのが目立つ。俺はチームがどうすれば点を取れるのかを考えている。3人目、4人目の動きを全員で共有しないと点は取れない」

 今季、不退転の覚悟で臨んでいる柏木の目は本気だ。

取材◎杉園昌之


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