上写真=川崎F戦で先制点を挙げ、2試合連続ゴールを記録したマルコス・ジュニオール(写真◎J.LEAGUE)
■2020年9月5日 J1リーグ第14節(観衆4,971人/@日産ス)
横浜FM 1ー3 川崎F
得点:(横)マルコス・ジュニオール
(川)三笘薫2、家長昭博
再現性の高さを感じるファインゴール
見事だった。横浜FMの先制ゴールのことだ。位置取りと2つのダイレクトパスと、シュート技術が融合し、川崎Fのゴールネットを揺らした。開始早々の2分。まさに電光石火で決まった得点だった。
右ウイングの松田詠太郎からインサイドハーフの天野純に斜めに入れたパスは、うまく収まらず相手左サイドバックの車屋紳太郎にボールを突かれてしまった。しかし、そのこぼれ球をアンカーの扇原貴宏が拾ってダイレクトで敵陣右サイドに出張っていた右サイドバックの小池龍太へと送る。
まず、このパスが良かった。扇原が間髪入れずに右サイドへ送ったことで、ボールの周りにいた相手FWの三笘薫と車屋をその場に置き去りにした。それと同時にパスの受け手である小池に『選択する時間』を与えることになった。
ボールを収めた小池は自身の前方、相手左SBの車屋が空けたスペースに入り込もうと走る松田に、絶妙のタイミングで絶妙の強さの縦パスを出した。そして松田は右コーナー付近からダイレクトでマイナスのロークロスを入れた。
この選択も素晴らしかった。ニアに飛び込むジュニオール・サントスではなく、ファーで構えるエリキでもなく、松田はクロスの終着点にゴール正面のやや後方にいたマルコス・ジュニオールを選んだ。
松田にボールが出た時点で、川崎Fの最終ラインはそのボールの位置(=ライン)まで下がらざるを得なくなる。必然的にボックス手前でとどまったマルコス・Jの目の前には大きなスペースが生まれた。マルコス・Jは、松田からのクロスを右足ダイレクトで叩き、ゴールの左隅へとボールを流し込んだ。
ダイレクトパスをはさみながらテンポを変え、相手に寄せさせずに、まんまとゴールを奪った。淀みのないパス回しとミスのない選択は練習の賜物でもあるだろう。即興性よりも再現性の高いプレーと映った。
このファインゴールの勢いを駆って、その後も2点目、3点目と得点を加えていければよかったが、首位に立つ川崎Fはそれを許さなかった。次の1点は川崎Fが奪い、そして横浜FMは守備で後手を踏んで、後半に逆転されることになった。
「いいスタートは切れたと思いますが、残念ながら勝利を収めることができませんでした。相手がすごく良いチームというのも、すごく良いサッカーをするというのも分かっていましたし、相手もわれわれのサッカーについてよく分かっていた。弱点をしっかりと突いてきましたし、スキルが高く連係も取れていた」
マルコス・Jはそう言って、試合を振り返った。2試合連続ゴールを挙げながらも、勝利につなげることはできなかったと悔やんだ。ただ、下を向いている暇はない。
「ダービーなので勝ちたかったゲームですが、チームの調子が良くないと勝てません。今日に限っては相手の方が連係がとれていて、良いサッカーをしたと思います。今日は強いチームに負けた。ですから下を向かずに、切り替えて次の試合に準備していきたい」
次節は中3日で迎えるアウェーの名古屋戦。チーム最多の9得点を挙げるエースは前を向いた。