FC東京が主力の移籍などでチームを組み替えている。若手の突き上げが不可欠な状況にあって、FW原大智の存在は大きい。チーム内には強力なライバルが揃うが、191センチの長身を駆って割って入る意欲がにじみ出る。

上写真=原は191センチの長身とスピードの両方を持った才能だ(写真◎FC東京)

「間違いなくゴールを求められています」

 長谷川健太監督が期待する若手の筆頭と言ってもいいだろう。ここまでリーグ戦7試合出場で2ゴール。第8節のサガン鳥栖戦では、69分にピッチに入って17分後にJ1初ゴールを決めた。第12節の湘南ベルマーレ戦では87分からの出場で、90+3分にゴール。短い時間でも結果を残せるようになってきた。

「監督からは何か特別なコミュニケーションがあったわけではないですが、間違いなくゴールを求められています。途中からでも、短い時間でも、どんどん決めていきたい」

 若い選手が次々とピッチに送り込まれる刺激的なチーム状況の中で、意識が変わったのだろう。原の口からは何度も「走る」がキーワードとして出てきた。

 例えば、湘南戦のゴール。

「長澤(徹)コーチから常にゴール前に走ることを言われてきました。その意識が実ったゴールだと思います」

 相手のCKを防いだところから始まったカウンターで、レアンドロのパスを受けて左足でゴール左に流し込んだのだが、そこまでのダッシュがすごかった。最初は自陣ゴール前のペナルティースポットあたりにいたのだが、ボールを運ぶアルトゥール・シルバとレアンドロのスピードに負けないように、191センチの長身を生かした長いストライドでぐいぐいと進む迫力! いわゆるボックス・トゥ・ボックスのランで躊躇(ちゅうちょ)なくゴール前に飛び込んでいった。

「守備でも間違いなく走るチームだと思うので、バランスというかどちらも大事ですが、短い時間でもしっかりこなせるようになってきたと思います。その時間を増やせるようになればいいと思います」

 8月26日、第26節の鹿島アントラーズ戦では、J1初のフル出場も果たした。

「途中出場が続いていたので、久々に公式戦の緊張感を経験できました。後半に少し足がつりかけたりして、まだまだ90分の体になっていないと感じたので、練習の強度を上げて、どんどんスタメンからでも出ていきたい」

「J1でのスタメンは初めてだったのですが、鹿島の守備は厳しさや激しさが感じられました。強くならなければいけないと思います」

 J1で初のフル出場という経験が、頭の中も変えた。90分という基準で戦える自分にグレードアップさせる意欲があふれ出る。長谷川健太監督も「順調に来ているのではないかと思います。成長曲線は、急激な上昇カーブではないのですが、徐々にしっかりとした足取りで描いています」とべた褒めだ。

 次のゲームは、JリーグYBCルヴァンカップ準々決勝の名古屋グランパス戦。8月15日にリーグ戦で対戦していて1-0で勝利、原も89分からピッチに入っている。それを踏まえて、出場したらどんなプレーをするのかイメージはできている。

「クロスは絶対にチャンスになります。キーパーとDFの間にスキができると思うので、空いているところをどんどん狙っていきたい」

「自分は後半から出るとしたら、リーグ戦のときもスペースが空いていたので、そこを狙っていきたい」

 プロで戦う武器は「ゴール前に走ることと、狭いゴール前での得点感覚」ときっぱり。一発勝負のカップ戦で劇的な決勝点を挙げることができれば、その成長曲線は驚くほど急上昇するはずだ。


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