上写真=初先発で初フル出場。品田がアンカー候補に名乗りを上げた(写真◎J.LEAGUE)
■2020年8月23日 J1リーグ第12節(@味スタ:観衆4,599人)
FC東京 3-0 湘南
得点:(東)永井謙佑、ディエゴ・オリヴェイラ、原大智
「優勝にも近づいていける」
存在感が増したのは、スパイクの黄色が目立ったからだけではない。品田愛斗がJ1で初先発、そのまま最後までピッチに立って、3-0という勝利の甘さをたっぷりと味わった。
長谷川健太監督から与えられたポジションはアンカー。4人の最終ラインの前に立って攻守に重要なタスクが課せられる。今季からトライしている4-3-3システムの肝とも言えて、その軸になってきた橋本拳人は移籍、高萩洋次郎はこの日はローテーションでベンチ外となって、品田が指名されたというわけだ。
J1でまだ1試合、6分しかプレーしたことのない20歳の若者にこの重要なポジションを託したのには、もちろん理由がある。長谷川健太監督は「1年目から才能を認めていました。メンタルの部分でクリアできれば、トップのポテンシャルを持っていると思っていました」。つまり、課題をクリアしたからこその納得の起用だったのだ。
堂々としたものだった。周囲と連係しながらパスコースをうまく消すポジションに立ったかと思えば、鋭い縦パスで何度も快速FWを生かそうとした。もちろんミスもあったが、「自分の良さを出すには落ち着いてプレーすることが一番だから、ミスしても下を向かないで明るくやろうかなと思っていました」の精神だ。「ビビっていたら仲間に迷惑をかけますから、そこを意識してゲームに入りました。入る前までの緊張はあったけど、ピッチに入ったら落ち着いてできるとは思っていました」と動じなかった。
自己評価は「守備の部分で(プレスに)行くところと行かないところ(の判断)は苦手だったけど、この3年間で積み上げてきたので及第点ぐらい。前半はパス・アンド・コントロールでテンポを出せたことが多かったけれど、後半はワンタッチではがせるのが分かっていたのに、周りとの関係で怖くて出せないシーンあったので修正したい」だった。ただ、「シンプルにこのレベルでやれるという手応えはありました。今日までは不安でしたけど、自分の力でこのチームに貢献することができれば優勝にも近づいていけると思うので、ポジション争いを頑張っていきたい」と、90分ですっかりと意識が変わった。
78分にはこぼれ球を落ち着いて胸トラップして、ボールの落ち際を叩くミドルシュートでゴールを強襲した。意識の変化を象徴的に示すような思い切りの良さが印象に残る。
「ドライブ回転で蹴ると何かが起こるかなと思って、遠めだったけど狙ってみました」
FC東京のアンカー候補に堂々と名乗りを上げた背番号44。このミドルシュートのように、青赤に「何かを起こす」存在になりそうだ。
取材◎平澤大輔 写真◎J.LEAGUE