上写真=値千金の決勝点を挙げたレアンドロ(右/写真◎J.LEAGUE)
■2020年8月15日 J1リーグ第10節(@味スタ)
FC東京 1ー0 名古屋
得点:(F)レアンドロ
・FC東京メンバー◎GK波多野豪、DF室屋成、渡辺剛、森重真人、小川諒也、MFアルトゥール・シルバ、髙萩洋次郎、安部柊斗(90+2分:三田啓貴)、FW永井謙佑(69分:アダイウトン)、ディエゴ・オリヴェイラ(81分:内田宅哉)、レアンドロ(90+2分:原大智)
・名古屋メンバー◎GKランゲラック、DF成瀬竣平、中谷進之介、丸山祐市、吉田豊(55分:太田宏介)、MF稲垣祥、ジョアン・シミッチ(66分:石田凌太郎)、ガブリエル・シャビエル(46分:相馬勇紀)、FW前田直輝(46分:山﨑凌吾)、金崎夢生、マテウス
足を止めずに戦った
キックオフ時点で31℃。空気が肌にまとわりつくような暑さの中でスタートした試合は、それでも球際は激しく、アプローチは鋭く、切り替えは素早く、という互いの信条をぶつけ合う展開になった。
とりわけ際立ったのが、FC東京のアグレッシブさだ。守備から攻撃、攻撃から守備と、酷暑のゲームとは思えないプレーぶりを披露した。3トップの中央、CFの永井は相手CBに何度もプレスをかけて配球を妨げ、右の翼ディエゴ・オリヴェイラと左の翼レアンドロは相手サイドバックを監視して時には自陣深い位置まで戻り、ボールを奪うや一気に前線へ駆け上がった。3人は献身的なプレーで何度もスタンドを沸かせたが、この3トップのハードワークに応えるようにMF陣も、守備陣も、アグレッシブな姿勢を示し続けた。
スコアを動かしたのも、そのFC東京だった。33分、敵陣に押し込んだ状態から、スペースを埋めるために右サイトバックながら中央にポジションを取っていた室屋が反応。鋭いアプローチでボールをつつくとこぼれ球を安部が拾い、レアンドロ、安部、髙萩、永井とつないでいく。パス交換の間にボックス内に進入したレアンドロが再びボールを受け取ると、相手の寄せが甘いと見るやボックス左から右足を振り抜き、ゴール右隅を見事に射抜いてみせた。
名古屋も前田や成瀬が鋭いミドルシュートを放つなど、好機がなかったわけではない。ただ、FC東京のブロックを攻略するまでには至らず。後半もその流れは変わることがなく、時間が過ぎていった。当然、ルヴァンカップから中2日でゲームに臨んだ名古屋と1週間の準備期間があったFC東京では疲労度という点で差があったはずだ。しかし酷暑の中でも常にベクトルを前に向け、足を止めずにFC東京が戦った事実は評価に値するだろう。
82分には名古屋の成瀬がこの日2枚目の警告を受けて退場となり、FC東京は一人多い状態となる。アディショナルタイムにはカウンターからアダイウトンが持ち込んで石田のハンドを誘い、PKを獲得。そのままアダイウトンがキッカーを務めたPKはランゲラックに止められ、追加点こそならなかったが、FC東京は最後まで力を尽くし、相手に主導権を渡すことなく、ゲームを押し切った。
「先制点を取れたのが非常に大きかったと思います。自分たちのリズムで試合を進めて勝てたことは大きな自信になる。
前節のセレッソ戦で手応えをつかむことができたので(0-0のドロー)、今日はディエゴと永井のポジションを入れ替えましたけど、前節からの流れというところで非常にいい形で試合を迎えられました。先制点の場面も高い位置でボールを奪って、そこからのコンビネーションでゴールを取れて、非常に素晴らしい得点だったと思います」
長谷川健太監督も厳しい気候条件の中、戦い抜いた選手たちを称え、持ち味を出して手にした勝ち点3の価値を強調した。この試合を最後にドイツのハノファーに旅立つ室屋の門出をFC東京らしい勝利で祝うことにもなった。
この結果、FC東京は暫定4位に浮上。再び上位争いを演じる準備を整えたという意味でも、大きな1勝と言える。
現地取材◎佐藤 景 写真◎J.LEAGUE