大分トリニータは最後まで戦った。JリーグYBCルヴァンカップグループステージ最終戦となる第3節で柏レイソルと対戦。すでに敗退が決まったあとのゲームで、多くの若手をメンバーに入れ、多くのチャレンジの場として逃げなかった。

上写真=16歳の屋敷が先発。絶好期にも絡んで奮闘した(写真◎J.LEAGUE)

■2020年8月12日 YBCルヴァンカップDグループ第3節(@三協F柏:観衆1,969人)
柏 3-1 大分
得点:(柏)細谷真大、北爪健吾2
   (大)渡大生

「裏を取りやすかった」が…

「前半はいい試合をしていたので、先制点を取れていれば違う展開になったかもしれないですが…」

 大分トリニータの片野坂知宏監督は、柏レイソルに敗れたことを悔やんで、絞り出すように言った。

「(JリーグYBCルヴァンカップのグループステージで)敗退が決まっていますが、プロとして勝負のかかったゲーム」と選手たちを鼓舞した片野坂監督は、「いろんなチャレンジをしたい」と臨んだ。

 先発メンバーには、プロの公式戦デビューとなるMF弓場将輝とFW屋敷優成がいた。18歳と16歳の2種登録選手だ。ほかにもリーグ戦で出番の少ない選手たちも起用していて、彼らが「勝負のかかった試合」で何ができるのかを見極め、チーム力の底上げを狙うゲームになった。

 その思いに選手は応えた。キックオフからとてもリズミカルだった。暑さのためにスピード重視というよりはじっくりとボールを回しながらだが、確実に前進し、特に右サイドから攻略していった。「右では仕掛けるときに裏が取りやすかった」と松本怜が明かしたように、3バックの右の高山薫から右サイドに張って突破を図る松本へと、何度も鋭いパスが届けられた。

 ところが、後半に一気にペースダウンしてしまった。片野坂監督は「レイソルの修正力、後半にたたみ掛ける迫力に屈してしまいました」と認め、松本は「僕たちが後ろで回しているところへのディフェンスのはめ方を変えてきた印象があって、奪われ方が悪くてやられてしまった」と分析した。確かに柏はメンバーを入れ替えることで高山を抑えにかかり、大分の守備のラインを壊す策を施してきた。それが、松本の実感につながったのだろう。

 56分、58分と一気に失点してリズムを失うと、70分にも追加点を許した。アディショナルタイムに渡大生が1点を返したが、時既に遅し、だった。

 しかし、片野坂監督は多くの収穫を手にしたことにも言及している。その象徴的な2種登録コンビについて。

「トレーニングでも一緒にやっていましたし、初めての公式戦での出場でしたが、落ち着いて自分の特徴を出してくれたと思います。なかなかこういう機会がない中で、2人がチャレンジしてその中でどういう戦いができるかを見せてくれました」

「屋敷はシュートチャンスにせめて枠に飛ばすか、もちろん点を取れたらさらに自信につながった場面がありましたし、弓場もボランチで落ち着いてしっかりと役割を果たしてくれました」

「2人とも90分は出られませんでしたが、今後につながるゲームになったはずです。ステップアップへの刺激になってくれればと思っています」

 そう評価した片野坂監督は負けが込んでいる状態も「リーグ同様に、勉強代をたくさん払ってやっているところ」と真摯に受け止める。挑戦のための90分は1-3という黒星で終わったが、未来の白星につながっていく貴重な時間になるのだということもまた事実である。

取材◎平澤大輔 写真◎J.LEAGUE


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