上写真=一美がストライカーらしい先制点を決め、この晴れやかな顔(写真◎J.LEAGUE)
「両方とも点を取れるように」
角度をつけたショートパスを折り重ねるように連続して攻撃を組み立てる横浜FC。その細やかなリズムとは反対の、一瞬のロングボールでゴールは決まるのだから、サッカーは分からない。
38分、センターサークル内でFKを得たときにはもう、一美和成はアクションを起こしていた。「(佐藤)謙介くんとは蹴る前に目が合っていたので、動き出したらいいボールが来ました」。佐藤も狙っていた。ベガルタ仙台の選手が主審に抗議していたそのスキだ。ゴール前に高く送ったボールを、一美はDFに寄せられながら胸で抑え、相手がタッチしたボールが運良く目の前に落ちてくる。「前にこぼれたので、ファーを狙って思い切り足を振りました」。力を得たボールはゴール右へときれいに飛んでいった。
待望の先制点だった。序盤にGK六反勇治が負傷交代するアクシデントはあったものの、主導権はほぼこちらの手中にある。あとは最後を崩すだけ、のところまで行っては何度も阻まれていただけに、異なるリズムでの先制点は効くはずだった。しかし、57分には同点に追いつかれてそのまま引き分け。自らの一発は「決勝ゴール」になりそこねた。
再開後の3連戦で注目されたのは3バックへの移行だが、もう一つ、ファンの楽しみは一美と斉藤光毅で組む2トップだ。今季、鳴り物入りで加入したリアルストライカーと、アカデミー育ちでルックスはアイドル並み、しかも相手を翻弄するドリブルの使い手、というコンビなのだ。前節の柏レイソル戦でも2人の関与から松浦拓弥のゴールが生まれていて、今後の爆発が期待されている。
「2トップなので2人の関係で点を取れると思いますし、光毅のスタイルを理解してプレーしているつもりです。動き出しの部分や自分が裏に抜けたら(光毅が)落ちるとか、2人で話し合っていて、徐々によくなっています。次は両方とも点を決められるようにやっていきたいと思います」
飛び出したのは、ツインゴール宣言。横浜FCのファンならずとも、このコンビの成長は楽しみだ。
取材◎平澤大輔 写真◎J.LEAGUE/Getty Images