上写真=リラックスした表情を見せる興梠(写真◎杉園昌之)
背中を向けてパフォーマンス
ベガルタ仙台の勝利から一夜明けた午前11時前。浦和レッズの選手たちがクラブハウスからぽつぽつと姿を見せ、練習場に出てきた。全員がそろったところで円陣。大槻毅監督が少し話をすると、しばらくしてゆっくりジョギングを開始。よく見ると、練習着に交じり、一人だけユニフォーム姿の男がいる。どうも様子がおかしい。リラックスした選手たちには笑顔が広がり、槙野智章の声が聞こえてきた。
「メディアタイム、メディアタイム」
練習場の脇にズラリと並んだ報道陣が、一斉にカメラを構える。列から外れて走ってきたのは興梠慎三である。くるりと背中を向けると、100ゴールにちなんで背番号100が見える。カニ走りでシャツをぴんと引っ張るパフォーマンスまで披露。試合ではお見かけしないポーズである。前日の仙台戦後はクラブ記録について聞かれても、「チームの勝利が一番」とさほど興味を示さなかったものの、この日は上機嫌でサービス。
それもそのはず。クラブスタッフから特別にプレゼントされたユニホームだという。背番号100の下には「SHINZO」の文字が記されていた。仲間から親しみを込めた粋なはからい。ゴール前では味方の位置が良ければ、迷わずパスを出す点取り屋である。フォア・ザ・チームを貫くストライカーにとっては、何よりもうれしかったのかもしれない。
クラブ通算は断トツ1位の100ゴールを達成。J1通算でも歴代6位の149ゴールとなり、節目の大台まで残り「1」とした。次節は再開後初の有観客で、ホームに古巣の鹿島アントラーズを迎える。舞台はすべて整っている。浦和のエースが、熱狂的なファン・サポーターの期待に応えないわけがない。
取材・写真◎杉園昌之