上写真=厳しいトレーニングにも笑顔が戻ってきた。調子が上向いている証拠だ(写真◎浦和レッズ)
「5秒」のスピード感
浦和が6月13日にFC町田ゼルビアと行った練習試合。埼玉スタジアムで観客を入れないまま開催する状況は、再開後の格好のシミュレーションになった。ただ、30分×4セットマッチの1本目に左サイドバックとして先発した山中亮輔は3分、タイミングよく攻め上がって相手ペナルティーエリアにかかるところで相手と接触、左足を痛めてそのままピッチをあとにしている。
「ちょっと力が入らなくなったので交代になりましたけど、今日(6月17日)の練習から合流しているのでもう大丈夫です」
大事に至らなかったのが何よりだが、実はこの接触プレーまでの一連のアクションは山中の好調ぶりと浦和の狙いをよく示していた。
右から左へ、岩波拓也、槙野智章とセンターバックでボールを動かし、左タッチライン際に大きく開いた左サイドハーフのマルティノスにボールが入る。マルティノスの内側にポジションを取っていた山中はその瞬間、相手サイドバックの裏側へインサイドからアウトサイドに斜めにダッシュしてボールを引き出した。4−4−2のフォーメーションでサイドハーフの関根貴大とマルティノスをワイドに置くことで、サイドバックがインサイドのポジションを基準にして攻めていく、という浦和の狙いが顕著に表れたシーンだったのだ。
槙野のパスからマルティノスを経由して山中に渡るまでわずか5秒。このスピード感は今季のテーマだという。
「(ルヴァンカップとリーグ1節で)2試合勝てていて、チームも波に乗っている状況で中断を迎えたのはもったいなかったですね。その2試合を含めて、縦に速く攻めるという部分を表現していくために、ビデオを作ってもらって意思疎通できています。走らなければならない、という部分は大槻監督も求めているところです」
ゲームをコントロールしていく
負傷によって大事を取り、山中はピッチをあとにしたのだが、この試合とその後の練習も含め、多くの気づきを得られたようだ。
〈試合の入り方について〉
「(無観客の試合では)サポーターの声援がないので、ふわっと入らないようにしないといけないと感じましたね」
〈無観客だからこその声の重要性〉
「プラスの面としては、声が通るのでコーチングのところでうまくコミュニケーションを取っていければと思います。そういうところが大事になると思います」
「普段であれば隣の選手の声しか聞こえなくて、あ、西川選手の声はよく通りますけど(笑)、練習試合では逆サイドの関根選手まで届いていたと思います」
〈声によるコーチングのメリット〉
「コミュニケーションというところでは、後ろから寄せてくる相手を背負っている場面でコーチングが大事になってきますね。来てるよ、と声で教えられるので、そこでボールを失うことは減ってくるのではないかと思っています。そこはポジティブな要素ですね。(無観客の練習試合で)そういう経験ができたのは大きいと思います」
〈体の使い方の注意点〉
「これだけ体を動かさなかったことは、これまで多分なかったので、どこまで(体力面で)落ちているのかを見極めるのは難しかった。特に、ストップするときにうまく止まれない感じでした。そこが一番難しかったですね」
〈守備のイメージ〉
「ボールホルダーに寄せるところは、試合が近づくにつれて強度が求められています。今日も激しいトレーニングをやりましたし、寄せ切るとかボールホルダーにアタックするスピードは強く求められています。大槻監督の求めるレベルまでしっかりトレーニングして表現できるようにしたいと思います」
「チームの約束事も戦術としてビデオを含めてミーティングでしっかり話しています。原理原則をしっかり守って、大槻監督の戦術をしっかり表現しなければいけないと思っています」
〈攻撃面の役割〉
「もちろん、僕の特徴は攻撃の部分にあるので、そこで違いを出していかなくてはと思っています。ゲームをコントロールしていくという面で落ち着かせる存在になりたいですし、ボールを失わない選手になれると思います。中断前も点も取れていてほかにも攻撃の形もできていましたから、そこから上積みして、みんなでたくさんのゴールを取っていけるようにしたいと思います」
「見ている人を熱くさせるように、エネルギッシュに縦に速く走ることが大事になってきます。そういう姿勢を見せていきたいと思います」
再開するまでにさらなる気づきは増えるだろうし、試合が進むにつれてそれは何度となく更新されていくだろう。そのたびに、「強いレッズ」が甦ってくるはずだ。