上写真=片山瑛一の口調からは順調な調整ぶりがうかがえる(写真◎スクリーンショット)
片山が挑む「再現性」
2018年にファジアーノ岡山から加わった片山瑛一は、今季はJ1挑戦3年目に当たる。埼玉県の進学校から受験して早稲田大に進み、セレクションを受けてサッカーを続けた異色のDF。その思慮深い性格を生かし、守備の複数ポジションをこなせる知性派として、ロティーナ監督の高度なサッカーを体現している。
とはいえ、先発を重ねた昨季序盤以降は、ベンチ入りしながら出場時間はなかなか伸びなかった。さあ逆襲、と今季開幕を迎えた直後に自粛期間に入ってしまったが、「トレーニングも限られていましたが、その中でもまずは健康を一番に考えて、体調管理にこだわっていました。状況が落ち着いて再開するときにはベストの状態に早く戻せるように意識しながら」、その時を待っていた。
東京ヴェルディの監督時代からそうであるように、ロティーナ監督の要求は高い。しかしそのレベルの高さが、自慢の頭脳には心地いいのだろう。「再現性」を求められるトレーニングに手応えを感じている。
「要求されるレベルは去年から高くて、隙のない守備であったり、攻撃も同じように、再現回数をより増やすことを求められていて、一つのプレーについてできていないことがあれば、ビデオで共有しながらクリアしています。去年、着手できなかったところも今年は触れてきているので、レベルアップしていると感じています」
その点では、先週末の練習試合でも好感触を得たという。1人60分のプレー時間を与えられた中で、「トレーニングで積み重ねてきたところや昨年から継続しているベースの部分は理解できるようになってきましたね」「日々トレーニングで意識してやっているもの、反復練習で当たり前にできたことを改めてディフェンスメンバーだけで再確認できたり、より強固になっていけるのではないかと思います」「まだ暑さに順応し切れていませんが、再開までに時間があるのでいい状態で迎えたい」
よどみなく話す様子からは、順調さがうかがえる。
田平の読書と下半身トレ
同じように心の強さを感じさせたのは、ルーキーの田平起也だ。オンライン取材でも物怖じせずに気持ちよく会話のキャッチボールを楽しむ姿は、プロ1年目であることを忘れさせてくれる。
練習試合の感触を「体力的にキツさはあったが、判断や戦術の部分は成長を感じています」ときっぱり。プロ入り直後のいきなりのリーグ戦中断にも「1年目で自分としても気合を入れていましたけど、すぐに切り替えて自粛期間をうまく使おうと。そこはちゃんとできました」とさらり。6月15日に発表されたスケジュールについても、過密日程であることを「その分、チャンスが回ってくると思います。いつ出番が来てもチャンスをつかめるように準備しています」と落ち着き払って答えた。
自粛期間の使い方も彼らしさがにじみ出る。心と体。両面から自分自身に刺激を与えた。
「長いオフでしたから、こんなときは何も気にせずに下半身を鍛えられるので多めにやりました。チームから与えられた練習を1時間こなしたあと、下半身の筋トレにさらに1時間使ったり」
「あとは読書ですね。これは中断前と変わらないのですが、ペースが上がりました。2日に1冊ぐらいで、インプットとアウトプットの両方を一緒にやりました。よく読んだのは西野亮廣さんの本で、4冊。経営や広告、マーケティングの話でサッカーとはかけ離れているんですけど、気になったところをノートに書いて、今後に生きるだろうと」
片山にしても田平にしても、ロティーナ体制下ではまだ主力の座にはたどり着いてはいない。しかし、指揮官が語ったように、厳しい連戦となるリーグ戦では18人から20人のコアメンバーを軸に戦う姿勢を示している。狙うはそこだ。
セレッソの強みは、2人のような「頭でプレーする」選手が控えていて、虎視眈々と「20人」に名乗りを上げようとするパワーがあることだ。
それが、チームを押し上げる強烈なブーストになるに違いない。