上写真=ユニフォーム姿で取材に応じた武藤(写真はZOOMの画面)
サッカーのない日常
新型コロナウイルスの感染拡大を受け、チーム活動が休止してから2週間が経過した。いまだ再開の見通しは立たないが、武藤は個人で前向きにトレーニングに取り組んでいる。チームに与えられたメニューをこなし、人が少なくなる夕方には一人でジョギング。気持ちを切らさずに体調管理に気を使っている。
「自宅でアスリートとしての体を維持しています。ボールに触ることがあまりできないので、ゴール集の映像などを見て、モチベーションを高めています。早く埼スタ(埼玉スタジアム)の熱狂を味わいたいです」
サッカーのない日常は、かつても経験した。2011年にはベガルタ仙台の一員として東日本大震災で被災し、リーグ中断中に練習もできない状況に陥った。ただ、今回はまた違うものがあるという。
「いつ再開するのかが分からない。そこが難しいところです。それでも、仙台のときは再開したときに、サッカーで人の気持ちを動かし、勇気と希望を与えることができました。今回もそういうプレーを見せたい。生きていく上では、もっと大事なことがあるかもしれません。ただ、僕はサッカーをはじめ、スポーツには価値があると思っています」
もどかしさはあるが、武藤はサッカーの持つ力を強く信じている。全国で緊急事態宣言が出され、外出自粛が続くなか、浦和はインターネット上のバーチャル空間で合同トレーニングをする計画を立てている。「いい雰囲気を作れると思います」と武藤は新たな試みを歓迎していた。
厳しい環境のなかでも、いまできることをする。トレーニング以外の時間も有効に使うようにしている。朝、起きると15分から30分ほど読書する時間を設けたのも、そのひとつだ。家族との時間が増えたことで、もうすぐ3歳になる娘ともよく遊ぶようにもなった。
「少しずつパパっ子になってきたと思います」
画面越しからでも幸せそうな雰囲気は伝わってくる。武藤は自宅で肉体と精神のバランスを保ちながら、再開に向けて備えている。
取材◎杉園昌之