上写真=熱のこもった練習で再開に向けて準備を進める石原広教(写真◎杉山孝)
やるべきプレーは変わらない
右サイドを主戦場としながら、19日の練習では左サイドに入ることもあった。それでも石原広教は、「どこをやりたいとか、やれないとか、どこがやりやすいとか、前から考えていないので。左右どちらをやろうが、別に自分がやるべきプレーというのは絶対に変わりません。与えられたポジションでやるだけです」と飄々と話す。
浦和とのリーグ開幕戦では、右のウインバックとして先発。ボールを持てば、果敢に1対1で勝負していた。その強気な仕掛けだけを見ていると、これまでGKやCBとしてプレーしていた時間が長かったとは、にわかには信じがたい。
それでも石原は、「スピードはあるほうだったので小学校でGKをやっているときもフィールドをやらせてもらったし、CBをやる機会も多かったけど、インナーラップで上がっていって普通に点を取ったりしていたので。走るということはずっとやっていたし、“自分のプレー”はその頃からやっています」と、やはり飄々としているのだ。
そこに自信が加わった。トップチームに昇格後、2年間でのリーグ戦出場数は17試合どまりだった。だが、昨季に期限付きで福岡へ移籍すると、37試合に出場。イタリア人指揮官の下でも、監督交代があっても、ピッチに立ち続けた。
「それまでもJ1で数試合出させてもらって、その頃も自信がないわけじゃなかったけど、もっと自分がやれるプレーをしっかり出せるようになりました。迷いもなく自信を持ってやれるようになった。余裕ができたというのはあります」
迷わず、前へ。2-2で迎えた浦和戦の69分、ボックス内にクロスを送った後、自らも足を止めずに飛び込んでいく。ボールをもらって縦に仕掛けると、このプレーでPKを獲得した。このPKは決まらず勝ち越しこそならなかったが、存在感は十分に示していた。
福岡では当初、新しい戦術や移籍先に溶け込む難しさを感じたという。一方で、小学校時代からプレーしてきた湘南を初めて離れることで、芽生える気持ちもあった。それを石原は、「責任感」と表現した。「年下だったので口で言うのには難しさがあったのですが、それよりもプレーの方が響くんじゃないかなと思ったんです。だから、とにかく戦い続けるというのは意識していました」。福岡で身につけたものは、今季の石原にも息づき続けている。
逆転負けで落とした開幕戦だが、内容は悪くなかった。それだけに一層残念な中断期間だが、石原は下を向かない。
「練習試合はありましたが、やはり気持ち的に難しい時間が続いたということはあります。でも、この時期、時間を大切にするということが、チーム全員でしっかりできています。むしろこの期間でまたつくり直せるというのは、それはそれで良かったと思います」
足を止めることなく、前へと進み続けていく。
取材◎杉山 孝