現在、Jリーグは開幕戦を終えて中断中だが、この連載では再開後のリーグ戦でさらなる活躍が期待される各クラブの注目選手を紹介していく。連載第13回は、鹿島アントラーズの高卒ルーキー、MF荒木遼太郎を取り上げる。

ブラジル人との共犯関係

画像: 足元のテクニックに自信を持ち、密集地帯でもボールを失わない(写真◎J.LEAGUE)

足元のテクニックに自信を持ち、密集地帯でもボールを失わない(写真◎J.LEAGUE)

 今季の鹿島はチームの設計を見直し、発展途上の段階にあるが、攻撃の局面で両サイドバックを高い位置に押し上げ、幅を取る手法は従来のそれと変わらない。これに伴い、2列目の左右の担い手に防壁の内側に潜ってハーフスペースを攻略する仕事が求められる点も同じだ。荒木は外からの崩しも優秀だが、ブロック内での破壊工作こそ、例の特殊技能が存分に生かされる。

 ならば、いっそスタメンで――と話を進めたくなるが、現時点では切り札としての大きな値打ちと周囲との兼ね合いという2つの側面が秤にかけられそうだ。後者について具体的に踏み込めば、点取り屋のエヴェラウドと中盤の仕掛人ファン・アラーノという助っ人との関係性だろう。

 事の良し悪しはさておき、ザーゴが監督である以上、おそらく攻撃陣における最重要キャストはこのブラジル人ペア。彼らと「共犯関係」を取り結べる人材がスタメンに近づくことになるのだろう。生かし、生かされる間柄だ。開幕戦を見る限り、新助っ人と周囲との連係は道半ば。まだまだ手探りの段階という印象が強い。

 目下、ピンで輝く荒木も味方と密接にリンクしながら局面を打開する絡み方の面では発展の余地がある。もっとも、これらは監督目線を想定した見立てに過ぎない。あれこれ考えすぎて、持ち味を失っては本末転倒だろう。固有の武器を前面に押し出すことに意味のある切り札的な起用はこの厄介事を回避するための知恵かもしれない。

 ただ、公式戦で3連敗。おまけにノーゴールとあっては、この生きのいい若者を長い時間ベンチに座らせておく余裕があるかどうか。中断期間を経て、荒木がブラジル人ペアと以心伝心みたいな間柄になっていても別に驚きはしない。男子三日会わざれば、刮目して見よ――である。その姿を再び拝める日が楽しみだ。

Profile
あらき・りょうたろう◎2002年1月29日生まれ、熊本県出身。中学時代はロアッソ熊本のジュニアユースでプレーし、中学卒業後は東福岡高校に進学。2018年にはU-16日本代表に選出され、AFC U-16選手権で2ゴールを挙げる活躍を見せた。昨年10月に鹿島アントラーズへの加入が内定。今季ルヴァンカップ初戦でプロデビューを果たした。MF。170cm、60kg


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