現在、Jリーグは開幕戦を終えて中断中だが、この連載では再開後のリーグ戦でさらなる活躍が期待される各クラブの注目選手を紹介していく。連載第10回は、FC東京の新加入選手、MF紺野和也を取り上げる。

速度を変えるドリブル

画像: 自身の特長を知る紺野。そのドリブルはFC東京の新しい武器だ(写真◎Getty Images)

自身の特長を知る紺野。そのドリブルはFC東京の新しい武器だ(写真◎Getty Images)

 伝説の名手ジョージ・ベストが語ったドリブルの要諦は2つある。1つは方向の変化、もう1つは速度の変化だ。紺野はどちらも上手い。
 とりわけ後者に関しては芸が細かく、ギアの変速が実に多彩。寄せ手が捕まえた――と、思った瞬間にはすでに消えている。その細かすぎる変化に追っ手がついていけなくなるわけだ。思えばこの手口、ねずみのジェリーと一緒だが。

 大卒新人と言っても、その実力は折り紙付き。在学中にヴィッセル神戸の練習に参加した際にはメッシをよく知る大御所アンドレス・イニエスタから直々に「君と一緒にやりたい」と口説かれたという。その誘いを袖にしてまで東京に加わった逸材をベンチに座らせて置く手はないか。

 目下、紺野の位置づけはスタメンの一角ではない。難局に備えて、ベンチが懐に忍ばせた「取っておきのジョーカー」といったところか。長谷川健太監督からの評価もすこぶる高い。それまでの流れをがらりと変えてくれるのだから、切り札的な使い方は確かに都合がいい。

 ただ、東京に「これは」という新進気鋭のアタッカーが現れるたびに、たちまちどこか(海外)へ消えてしまう。武藤嘉紀とか、中島翔哉とか、久保建英とか。もう、そういう時代だから仕方がない。

 だから、せめて1分でも長く見たいと思う人は多いかと。何しろ「日本のメッシ」になるかもしれない人ですから――いや、違う。

 見たいのは「ありのまま」の紺野和也だ。

Profile
こんの・かずや◎1997年7月11日生まれ、埼玉県出身。武南高校から法政大を経て2020年にFC東京に入団。大学時代からドリブラーとして名を馳せ、3年のときにはインカレ優勝に貢献。4年次にはユニバーシアードでは金メダルを獲得したほか、特別指定選手としてFC東京U-23で4試合に出場している。MF。161cm、58kg


This article is a sponsored article by
''.