上写真=横浜F・マリノスの主将を務めた喜田と扇原(写真◎J.LEAGUE)
「2人で先頭に立ってやってきた」
横浜F・マリノスのリーグ優勝が決まった直後、キャプテンマークを巻く喜田拓也に真っ先に駆け寄ったのは、もう1人のキャプテンである扇原貴宏だった。涙ぐむ2人は固く抱き合い、優勝の喜びに浸った。
今季の横浜F・マリノスは複数キャプテン制を採用し、喜田、扇原、天野純(現・ロケレン/ベルギー)の3人が指名された。7月に天野が移籍すると、その後は残った2人がチームを引っ張った。加入3年目で大役を任された扇原は、「苦しい時期もあったけど、キー坊(喜田)と2人で先頭に立ってやってこれた。キー坊にはすごく感謝しているし、あいつが居なかったらこの結果はなかったと思います」と、リーグ制覇をともに成し遂げた“相棒”を称える。
前節の川崎F戦で通算4枚目の警告を受けた扇原は、最終節のFC東京戦はスタンドからチームを見守った。夏場からボランチの一角として先発に定着し、シーズン後半戦の快進撃をけん引したからこそ、累積警告により大一番の舞台に立てないことは悔しかったに違いない。それでも最後の1週間は、「チームの士気を高められるように、少しでも良い練習ができるように」と、できる限りのことを尽くした。だからこそ、優勝決定戦も「一緒にやってきた仲間を信じて、安心して見ていた」と言う。そして勝利が確実となった試合終盤にピッチサイドに降り、終了のホイッスルが吹かれた瞬間、ピッチになだれ込んだ。
「今年は出られない時期もあったり、ケガもあったり、本当にいろいろなことを経験したけど、その中でチームに矢印を向けて、自分に何ができるかを考えてきました。キャプテンを任されて、チームが少しでも良い方向に行けるように、と考えながらやってきたつもりなので、それが結果に出て本当に良かった」
試合後の優勝セレモニーでは、喜田に続いて2番目にシャーレを掲げた。「キー坊は(栗原)勇蔵さんのように下部組織からマリノス一筋で、やっぱりキー坊がシャーレを掲げた瞬間は、マリノスサポーターにとって特別な瞬間だったと思います。ただ、自分はマリノスで育ってはいないけど、同じくらいマリノスのことが好き」と胸を張り、「サッカー人生の中で一番幸せな瞬間だった」と振り返る。
プロ10年目で念願の初タイトルを獲得し、「1個取ったら、2個、3個と欲しいという気持ちが湧いてきている。これに満足せず、常勝軍団になっていきたい」と宣言。「自分たちの力に自信を持っているし、このサッカーをもっともっと突き詰めたい。アジア、世界を相手にしても、自分たちのサッカーができれば十分に勝てると思っている」。15年ぶりにリーグ王者となったトリコロールの“キャプテン”は、来季のさらなる飛躍を誓った。
取材◎多賀祐輔 写真◎J.LEAGUE、田中慎一郎