上写真=左から金沢学院大附のGK石山アレックス、高知のFW松田翔空、京都橘のGK平誠都。チームを浮上に導く働きが期待される(写真◎森田将義)
[識者プロフィール]
川端暁彦(かわばた・あきひこ)/『エル・ゴラッソ』元編集長で、現在はフリーランスの編集者兼ライター。育成年代を中心に日本サッカー界を幅広く取材している。
森田将義(もりた・まさよし)/テレビ局の構成作家などを経て2012年からサッカーライターとして活動中。関西を拠点にジュニアから大学までの育成年代などをカバー。
※サッカーマガジン2026年2月号に掲載された記事を再構成
J加入の伊藤、山口。注目チームのキーマンは?
――2年生の話が出ましたが、今回の選手権が高校サッカーの集大成となる3年生のプレーは、やはり注目ですよね。
森田 京都橘のGK平誠都(たいら・まこと)は予選での活躍が見事でした。準決勝は0-1で迎えた後半アディショナルタイムに、ゴール前まで攻め上がってヘッドで同点ゴール。ラストプレーでPK戦に持ち込み、そこでもPKを止めて勝ち抜きに貢献しました。
川端 しかもPKキッカーとしても成功したんですよね。
森田 そうなんです。今年度のチームはケガ人が多かったですが、真面目なキャプテンの平が支えてきました。シュートストップが良く、左足のキックでパスの展開もできます。
川端 京都橘はFW伊藤湊太(いとう・そうた)の神戸加入が内定していますね。
森田 183センチのサイズで収めるプレーもできますが、最大の武器はスピードです。左サイドからシュートまで持ち込む形を持っています。今年度は負傷がちでしたが、コンディションは戻っているそうなので、どこまで活躍できるか注目です。
川端 Jクラブ内定選手では、昌平のMF山口豪太(やまぐち・ごうた)が湘南に進みます。左利きの技巧派で、ボールを運んで最後の仕上げに絡んでいける。左足の『一発』があるのも魅力です。
森田 逆に、なぜJクラブに行かなかったんだろうと思うのが、神戸弘陵学園のMF梅原良弥(うめばら・りょうや)です。以前から展開力や配球のセンスがありましたが、年明けのU-17関西選抜キャンプで守備の大切さを学び、攻守両面で貢献できるようになりました。
――注目しているチームは?
川端 守備陣にタレントがいる日大藤沢のDF榎本来輝(えのもと・らいき)は、競り合いに強く、キックも安定している現代的なCBです。U-16日本代表の経験がある2年生のDF橋本(はしもと)ジュアは、予選で良いプレーを見せていました。岡山学芸館と対戦する初戦の2回戦は興味深い顔合わせですね。
――岡山学芸館はMF万代大和(まんだい・やまと)が良いですね。左利きのアタッカーで、右サイドからカットインするドリブル、シュートは相手の脅威です。
森田 帝京長岡に注目しています。練習でも声がよく出ていて、頑張れる。2年生のMF和食陽向(わじき・ひなた)のテクニック、1年生のFW児山雅稀(こやま・まさき)のフィジカルなど、下級生が面白いチームです。昨年度の1回戦で大津に0-4で大敗している福井商は、豊富な運動量が持ち味のMF髙木那由多(たかぎ・なゆた)を中心に、自陣からつないでいくスタイルで雪辱を期しています。
――その福井商と1回戦で対戦する高川学園は、昨年度は初戦の2回戦で青森山田を破りました。そのとき2得点を挙げたFW大森風牙や、攻守に安定したプレーを見せるキャプテンのMF宮城太郎(みやぎ・たろう)に注目です。
川端 鹿島学園のDF齊藤空人(さいとう・そらと)は、キャプテンでCBの中心選手。1年生のときに茨城県選抜で、鹿島アントラーズユースの選手に混じって国体(国スポ)優勝に貢献しています。180センチと決して大きくはないですが、ヘディングも強いです。
森田 中学時代はボランチだったので、落ち着いてボールをさばくし、気の利いた守備をしますね。鹿島学園では2年生のFW内海心太郎(うつみ・しんたろう)にも注目しています。ぐいぐいゴールに向かってプレーするし、話したときも貪欲さを感じさせて、ザ・ストライカーという感じ。今大会を機に注目度が上がるかもしれません。
川端 今年の国スポで石川県選抜が3位に入ったとき、金沢学院大附のMF北村蕾芽(きたむら・らいが)が良かったです。いわゆるレジスタタイプの2年生で、パスを受けて、さばくのがうまい。ボール奪取、こぼれ球を拾うプレーもしっかりやっていました。
森田 予選の決勝では北村が中盤の後方でバランスを取り、同じ2年生のMF木村太一(きむら・たいち)が前にチャレンジする2人のコンビネーションが、見ていて面白かったです。金沢学院大附は個性が強いチームで、キャプテンでGKの石山(いしやま)アレックスがうまくまとめています。昨年度も正GKで選手権を経験していて、安定したシュートストップが持ち味です。
川端 インターハイでベスト4だった尚志のFW根木翔大(ねぎ・しょうた)はスピードがあり、ゴール前で体を張ってシュートまで持ち込む、ストライカーらしい選手です。ロングスローの飛距離がすごくて、やり投げの選手になれたのでは、と思うくらい(笑)。
森田 高知のFW松田翔空(まつだ・とあ)は、ゴール前のスペースに入っていく動きが抜群です。新田のMF山内愛翔(やまうち・まなと)はポゼッションスタイルのキーマンになりつつ、守備もできるし、県リーグ得点王という得点力もあります。
――今年度も日本一への熱い戦いが始まります。
川端 優勝候補が集まったブロックもあるので、どこが勝ち上がるか。選手権は難しい大会ですからね。
森田 インターハイではプレミアリーグ勢が勝ち上がって、選手権も傾向は変わらないと思いますが、組み合わせが偏ったぶん、勝ち上がるチャンスをつかむチームが出てくると思います。昨年度2勝して3回戦まで勝ち上がった松山北(愛媛)は、勝つたびに選手たちが自信をつけていく姿が印象的でした。優勝争いだけでなく、そういう変化も楽しみにしたいですし、その中で『こんな選手がいたのか』という存在が現れてくることに期待しています。
司会・構成◎石倉利英
