第104回の全国高校サッカー選手権大会が、今年も12月28日に開幕する。1月12日の決勝に向けて、高校サッカー日本一を争う参加48チームの戦いとともに注目されるのが、将来が期待される選手たちのプレーぶりだ。今大会を前に、長年の取材で高校サッカーを深く知るエキスパート2人が、全3回に分けて対談形式で注目のニューヒーロー候補をピックアップする。まずは前編から。

上写真=東京Vへの加入が内定している流通経済大柏のFW大藤颯太(赤)。高さと速さを併せ持つ大型ストライカーだ(写真◎川端暁彦)

[識者プロフィール]
川端暁彦(かわばた・あきひこ)/『エル・ゴラッソ』元編集長で、現在はフリーランスの編集者兼ライター。育成年代を中心に日本サッカー界を幅広く取材している。

森田将義(もりた・まさよし)/テレビ局の構成作家などを経て2012年からサッカーライターとして活動中。関西を拠点にジュニアから大学までの育成年代などをカバー。

※サッカーマガジン2026年2月号に掲載された記事を再構成

ワクワクさせてくる長、中野は1人で何とかする

――今大会も、Jクラブ加入が内定している選手が数多くいます。

川端 昌平のMF長璃喜(おさ・りゅうき)も、川崎Fへの加入内定が発表されましたね。ボールを持ったらワクワクさせてくれる選手で、ドリブルで局面を打開する、1人で何とかしてしまう力は以前から光っていましたが、加えて得点が取れるようになってきた。3年間で進歩してきた印象です。

森田 インターハイで見たときも、ボールを持ったらうまい、速い、取られない。川端さんが話したように得点に絡む仕事でも、より怖さを感じさせる選手になっています。

――予選の決勝では後半アディショナルタイムに、鮮やかなドリブルから決勝点を挙げました。

川端 サッカーの魅力の一つを体現できる存在で、チームが1点欲しいときに仕事をすることが求められています。1年生のときから試合に出て経験も積んでいますし、昌平が勝ち上がっていくためには長の爆発が必要になるはずです。

――森田さんの注目は?

森田 攻撃を1人で何とかしてしまうのが長なら、守備を1人で何とかしてしまうのが神村学園のDF中野陽斗(なかの・はると)です。いわき加入が内定していて、181センチとCBとしては大型ではないですが、空中戦が強いし、相手が前線に入れたボールをガツンと奪うことができる。攻撃的なスタイルの神村学園に中野がいることの意味は、すごく大きいと思います。

川端 ボールを運んだり、パス出しも上手になっていますからね。本人が意識して取り組んだ成果でしょう。

――神村学園は計3人のJクラブ加入内定選手がいますね。

森田 福岡に加入するMF福島和毅(ふくしま・かずき)は、あわただしくなっている現在のサッカーの中で、時間を作れる選手。自分で運んだりしながらボールを落ち着かせるセンスが抜群です。さらに今年度、分析担当のスタッフに映像を使って厳しく指摘されてから、守備の意識が変わったそうです。

川端 インターハイはケガ明けでコンディションが良くなかったので、巻き返したいでしょうね。町田に加入するFW徳村楓大(とくむら・ふうた)は、テクニックのあるドリブラータイプですが、馬力もあって小柄ながらパワフル。サイドハーフもできるので、プロでのポジションはそちらかもしれません。

――インターハイ優勝の神村学園に対し、準優勝の大津にもJクラブ加入内定選手がいます。

森田 DF村上慶(むらかみ・けい)が横浜FMに加入します。昨年度はCBでしたが、今年度はDF今井獅温(いまい・しおん)DF松野秀亮(まつの・ひであき)、185センチを超える大型CBが2人いるので、右SBに移りました。どんどん仕掛けてシュートまで持ち込むし、見ていて面白いです。

川端 もともと中学時代はSBでしたからね。182センチのサイズがあることに加えて、メンタル面でも強気の選択ができるようになりました。CBでもプレーできるので、守備面でカギを握る存在でしょう。

森田 進路について聞くと、横浜FMで活躍して、いずれは欧州でプレーするという、よどみない自信を感じます。プロ向きの器ですね。昨年度の3回戦で流通経済大柏に敗れたとき、決勝点につながるミスをしているので、選手権に懸ける思いは人一倍強いはずです。

――昨年度は準優勝だった流通経済大柏は、今大会最多となる4選手のJクラブ加入が内定しています。

森田 東京V加入のFW大藤颯太(おおふじ・そうた)は190センチの長身で、スピードもあるという素材感が目を引きます。プレミアリーグの東京Vユース戦で、視察していたトップチームの城福浩監督が高く評価して、練習に参加したことが加入のきっかけとか。

川端 流経は『一芸』があるタイプが多いですよね。昨年度の大藤はハイタワーのFWとして途中出場も多かったですが、今年度は主力としてワンランク上の選手になりました。

森田 水戸に加入するMF島谷義進(しまたに・きしん)は、現役時代に広島や大分などで活躍した流経の山根巌コーチが、ボランチにコンバートしたんですよね。

川端 そう、以前はアタッカーでした。運動量や強度を発揮しつつ、ワンタッチでさばいたり、最終ラインの背後に送ったり、シンプルなパスがうまい。ダブルキャプテンの一人で、リーダーシップもあります。

森田 話を聞くと「1対1は自分の間合いに持ち込めば絶対に勝てる」と言っていました。今年度の流経が攻撃的に戦えるのも、中盤を支える島谷の存在が大きいと思います。

川端 もう1人のキャプテンで磐田に加入するDF増田大空(ますだ・そら)は、特別な左足を持っている左SBです。島谷と同じく水戸に進むMF安藤晃希(あんどう・こうき)は、意外性があるドリブラー。スピードを生かして仕掛けることができますが、球際でしっかり戦う守備も献身的で、流経らしい選手ですね。

司会・構成◎石倉利英

※中編に続く


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