上写真=鹿島への加入が内定している関川
写真◎サッカーマガジン

「キャプテンとしてプライドがある」

 9月に行なわれた高円宮杯プレミアリーグEAST第11節。ライバル・市立船橋を破った流通経済大柏の関川郁万は、静かに拳を握りしめ、喜びを噛みしめた。

「勝たなきゃ意味ないし、しかも同じ千葉県のイチフナが相手だから、なおさら勝ち点3を取らなければいけなかった」。敵地での2−0の完封勝利に、「チームのみんなで無失点に抑えたのはよかった。無失点へのこだわりは、強いですよ」と、力強く話した。

 打点の高いヘディングと、対人の強さを武器に、1年時から名門校のレギュラーを務めてきた。最高学年になった今年度はキャプテンに就任。「下級生がのびのびとやれる環境作りを目指している。後輩がミスをしたときでも、『自分がカバーをするから大丈夫だよ』と、常にすぐ声をかけることを意識しています。練習からでもリラックスできるようにするのが、自分の役目なのかなと思いますね」と、チームの雰囲気作りにも気を配っている。

 今年5月には来季の鹿島加入内定が決まった。発表前の春休みには、ケガのリハビリをするために鹿島のクラブハウスを訪れ、プロ選手とも接した。「『植田(直通=現セルクル・ブルージュ)が2人いる!』って言われましたよ。似ているらしいですよ、雰囲気が」と、そのときのエピソードを明かす。植田本人とは「日本代表や鹿島の遠征に行ったりしていて、ほとんど顔を合わせられなかった」と言うも、その大物感は、すでに鹿島の選手たちも感じ取っていたのかもしれない。

 卒業後のプロ入りが内定し、6月にはケガから実戦復帰。高校生活最後の年は順風満帆に進んでいくように思えたが、復帰戦となったインターハイ予選では苦難が待ち受けていた。「(コンディションは)良くなかったです、全く……。体がうまく動かなくて……」。手負いの大黒柱を抱えた流通経済大柏は、昨年度の優勝から一転、4年ぶりに千葉県予選で敗退。その時期は「悩みましたね」と、苦悩を明かす。

「(鹿島加入が決まり)より見られる立場になったので『さすがだな』と思われるプレーをしなければ、と。考えすぎずに自然とできればよかったけれど……。それに、周りからは(予選で負けても)『お前はプロへの進路が決まっているからいいよな』って思われるかもしれない。でも、俺はこのチームでインターハイを取りたかった」

 周囲の注目とは裏腹に、チームの結果が伴わないことへの葛藤が襲う。沈んだ気持ちに追い打ちをかけるように、関川が目指した舞台には、かつてのチームメイトが立っていた。

「嫉妬まではいかないけれど、うらやましいな、と。(中学時代に所属した)FC多摩から4人(山梨学院に1人、桐光学園に3人)も決勝戦に出ているのに、俺は出ていない。『俺、何やっているんだろう』って思いますね……」

 さらに強豪校としての過去の実績も、責任感の強い主将に重くのしかかる。

「相澤(祥太=現流経大4年)さんたちの代もインターハイに出られていないけれど、選手権では3位という成績を残している。だから、自分たちも選手権に出なければ“史上最弱”の代になってしまう。自分もキャプテンとしてプライドがあるので、絶対に(周りに)そう言わせたくない」

 そんな苦悩を乗り越えてつかんだ、全国選手権への切符。夏の悔しさを晴らすべく、関川は冬のリベンジに燃えている。

 高校生活の有終の美を飾るため、関川はただ全国の頂点を見据えている。

文◎小林康幸

関川郁万[DF/流通経済大柏/3年]
せきがわ・いくま/2000年9月13日生まれ、FC多摩ジュニアユース出身。高さや対人の強さを武器とするセンターバック。セットプレー時には得点力も発揮する。ロングフィードの精度も特長の一つ。鹿島アントラーズ加入内定。182cm、72kg


This article is a sponsored article by
''.