「兄貴の存在が大きい」
今年3月、新チームの7番を背負う万能アタッカーは、どこか表情が浮かなかった。
「まだポジションを獲得できていない。本当に危機感を持ってやらないと…」
高円宮杯プレミアリーグ開幕を1週間後に控え、東福岡は強豪校が集う『第23回船橋招待U−18大会』に参加していた。福田がそう話したのは、大会初日の2試合を終えた後。どちらも先発のピッチには立てなかった。
それでも、途中出場でひとたびピッチに立つと、軽快なステップでいたるところに顔を出し、攻撃を引っ張る。東福岡では4−3−3システムのインサイドハーフが主戦場だが、「前線ならばどこでもできます」と、万能だ。チャンスと見るや、ストライカーのごとくゴール前へ走り込み、サイドでボールを受ければドリブラーのごとく積極的な仕掛けを見せる。中盤でゲームメークする能力も兼ね備えている。「常にどうボールに関わるか。そして、フィニッシュにどう持ち込むか。それが自分の仕事」と、自負する。
ただ、順調にプレーしているなかで、課題も垣間見えた。2試合目の静岡学園戦(●2−4)で相手GKと1対1になる場面が訪れたが、ゴールへと流し込めず、頭を抱えた。結果が出ない焦燥感と、決して忘れることのできない苦い記憶が、福田から笑顔を奪う。
「ゴールを決められない焦りはありますね。選手権のときからずっと…」
脳裏によみがえるのは、前回の全国高校選手権2回戦・富山一戦だ。そのときもGKとの1対1の場面でシュートを止められていた。結果的にスコアレスのまま迎えた後半アディショナルタイムに失点し、チームは敗退となった(●0−1)。「自分が決めていれば勝てたのに…。先輩たちに申し訳ないですし、それがいまだに自分の課題でもある」と、唇を噛む。
ずっと背中を追ってきた1学年上の兄・湧矢(現G大阪)とも、高校生活最後の試合となった。
「東福岡に入学したのは、兄貴の存在が大きい。兄貴がいなかったら、自分もこうしてサッカーをやれていない」と、兄の影響力を強調する。
「兄貴は何でもできるんです。攻めもできるし、守備もできる。あのうまさには、まだ敵わない。だけど、超えないとプロも見えてこない。甘くはないけれど、また一緒にプレーすることも夢なので、絶対にプロになりたい。兄貴と違うのは、フィニッシュの質。だから(改善されたという)結果はゴールですよね。その数を増やしたい」
自身のため、そしてチームのために、福田は今日もゴールを目指す。
取材◎小林康幸
福田翔生[MF/東福岡/3年]
ふくだ・しょう/2001年3月23日生まれ、小倉南FCジュニアユース出身。足もとの技術に優れ、前線ならばどのポジションもこなせる攻撃のユーティリティー。171cm、60kg