AFCチャンピオンズリーグエリート(ACLE)でついに決勝へと駒を進めた川崎フロンターレ。佐々木旭はそのユーティリティー性を発揮して、準決勝で試合をクローズする役割を見事に果たした。ファイナルの舞台でももちろん、その力を見せつける。

上写真=佐々木旭の万能性がチームを救った(写真◎J.LEAGUE)

時が止まった

「クリスチアーノ・ロナウドを止めた男」として、佐々木旭が一躍、時の人である。

 準決勝の70分から登場し、3-2の逃げ切りを達成。そのビッグプレーの一つが90+5分の大ピンチだ。クリスチアーノ・ロナウドが飛び込んできてGK山口瑠伊をかわし、あとは流し込むだけ、という場面で、突如現れた背番号5がジャンプしながら右足を思い切り伸ばして左足シュートをブロックしてみせた。

 その瞬間、不思議な感覚に襲われたという。

「いや、もうなんだろう、時が止まったように感じてて、抜け出された瞬間にもう終わったなと思いましたけど、瑠伊くんがうまく飛び出して時間を作ってくれたので、そのおかげで自分も間に合いましたし、もうあとはなんとか足に当たってくれっていう思いで飛び込みました」

 同点に追いつくはずだったクリスチアーノ・ロナウドは、訳が分からないというふうに首を小さく左右に振って、まさかのブロックを嘆くしかなかった。 

「ずっとテレビで見ていたような人たちと実際にピッチでプレーできたのは、すごくいい経験になりました」

 そう、止めたのはクリスチアーノ・ロナウドだけではない。右サイドバックに入って対面したのは、元リバプールのサディオ・マネである。

「マネ選手と対峙したときは距離感を間違えたりすると一瞬でやられてしまう。そこの調整は自分の中でできました」

 個人としての特別な経験が、自信を授けてくれた。

冷静な「緊急5バック」

 佐々木がピッチに入ったのは2-1と1点リードの場面。76分に家長昭博が追加点を挙げてからはなおさら、アル・ナスルの猛攻を受け止める形になった。87分には1点差に追い上げられ、アディショナルタイムの目安は6分と緊迫の最終盤。

 それでも守り切れたのは「緊急5バック」が功を奏したからだ。

「中では結構、冷静に話していて。相手のセンターバックの選手が上がってきて、こっちは(最終ラインが)4枚じゃ足りなかったので、アキさん(家長)を落として5枚にしようという話もできていましたし、冷静に対応できたかな」

 佐々木はファンウェルメスケルケン際に代わって4バックの右サイドに入ったが、家長を下げて5バックにして右ワイドを任せると、3センターバックの右に立つ形になった。左サイドバックでもセンターバックでもプレーできる万能ぶりが、この重要な場面でチームに柔軟性をもたらした。

 そして、勝った。悲願のアジア・チャンピオンまであと一つ。

「気分は最高ですけど、まだあと1試合ある。あと1試合勝たないと何の意味もないと思うので、切り替えてしっかりリカバリーしていきたいと思います」

 クリスチアーノ・ロナウドを止め、マネを止め、さあ次は誰を止めようか。元マンチェスター・シティのリヤド・マフレズか、元リバプールのロベルト・フィルミーノか、元ブレントフォードのイバン・トニーか。佐々木がアル・アハリの猛者たちを待ち受ける。


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