皇后杯 JFA 第45回全日本女子サッカー選手権大会の準決勝が、1月20日にサンガスタジアム by KYOCERAで行なわれた。2試合とも延長にもつれ込む熱戦となり、ちふれASエルフェン埼玉に競り勝ったINAC神戸レオネッサと、サンフレッチェ広島レジーナをPK戦の末に下した三菱重工浦和レッズレディースが、27日の決勝に駒を進めている。

上写真=第1試合ではI神戸(赤)がEL埼玉を下して決勝に進出(写真◎森田将義)

■2024年1月20日 皇后杯準決勝(@サンガスタジアム by KYOCERA:観衆1,079人)
I神戸 3-2(延長)EL埼玉
 得点=(神)田中美南、守屋都弥、北川ひかる
    (埼)吉田莉胡、祐村ひかる

■2024年1月20日 皇后杯準決勝(@サンガスタジアム by KYOCERA:観衆1,481人)
浦和 3-3(PK4-2)S広島R
 得点=(浦)安藤梢、猶本光、清家貴子
    (広)立花葉、瀧澤千聖、中嶋淑乃

浦和は追いついてPK戦勝利

 第1試合はWEリーグ第7節を終えて首位のI神戸と、12チーム中10位のEL埼玉の一戦。「かなり格上の相手なので、0-10も覚悟していた。前半を0-0で終えてゲームを壊すのが狙いだった」という池谷孝監督の言葉どおり、EL埼玉はブロック守備を徹底して相手に自由を与えない。

 それでもI神戸は相手の守りに手を焼きながらも、ディフェンスラインを中心にテンポ良くボールを動かし、機を見て相手ゴール前に縦パスを入れていく。39分にはMF松原優菜のクサビを受けたFW愛川陽菜が素早く前を向いて相手DFの背後にスルーパス、走り込んだFW田中美南が倒されてPKを獲得すると、自ら冷静に決めて均衡を破った。

 EL埼玉も52分、MF祐村ひかるが競ったこぼれ球をFW吉田莉胡に決めて同点に追いつく。だが以降はI神戸が押し込む展開が続き、前半からボールを動かして相手を走らせたことに加え、愛川が前線のスペースに流れ、相手を消耗させていたことが後半になって効いてくる。

「じれずに攻めようとやってきた。後半に入って相手の疲れが出た」と話すのはI神戸のジョルディ・フェロン監督。DF守屋都弥とMF北川ひかるの両翼による思い切りの良い仕掛けが増えると、61分には北川が左からゴール前に速いボールを送り、こぼれ球を守屋が決めて再びリードした。

 EL埼玉も83分、祐村が決めて再び追いつき、試合は延長に突入。ここでは得点なくPK戦突入かと思われたが、延長後半終了間際の120分、左から上げた北川のクロスが直接ゴールに吸い込まれ、勝負あり。「勝ちたい気持ちと、戦う気持ちを見せてくれた」とフェロン監督が称えたI神戸が3-2で勝利した。
 
 第2試合は浦和とS広島Rの対戦。9月に行なわれたWEリーグカップで対戦した際は2-1でS広島Rが勝利したが、S広島Rの中村伸監督が「(浦和は)毎回、我々の足りないところを気付かせてくれるし、自分たちの良さを引き出してくれる」と話したように力は拮抗しており、今季2度目の対戦も白熱した展開が続いた。
 
 この日はリベンジを狙う浦和のペースで試合が進む。19分にはMF猶本光が上げた右CKをDF高橋はなが頭で合わせ、最後はMF安藤梢が押し込んで先制した。さらに42分には、高橋が自陣から前線にロングフィードを送ると、相手DFのクリアボールを猶本が胸トラップで見事なコントロール。そのまま浮き球の状態で相手をかわし、見事なミドルシュートをたたき込んで2-0とした。
 
 前半アディショナルタイムに1点を返されたものの、浦和にとっては順調と言える試合運びだったが、次々とアクシデントが襲う。24分に負傷交代した安藤に続き、54分には猶本も負傷交代。「不測の事態に備えてやってきたけれど、まさかという選手が早々に退いてしまった」と楠瀬直木監督が振り返ったとおり、想定外の出来事にチームの歯車が狂っていく。
 
 反対にS広島Rは、うまく試合に入れていなかったMF渡邊真衣とMF柳瀬楓菜のダブルボランチがボールに絡む回数が増え、サイドから攻め込む場面が増えていく。60分にはMF中嶋淑乃がワンツーで左を突破してクロス、MF立花葉がヘディングで合わせたこぼれ球を、MF瀧澤千聖が押し込んだ。さらに2-2で迎えた延長前半立ち上がり、通算91分にも左サイドから仕掛けたこぼれ球を中嶋が決め、2点差をひっくり返した。
 
 さらに死闘が続き、両チームとも疲労が見え始めたが、このまま試合は終わらない。「選手の最後まであきらめない気持ちに助けられた」と話すのは浦和の楠瀬監督だ。延長後半の112分、DF遠藤優の右からのクロスをMF清家貴子が頭で合わせて追いつき、勝負の行方はPK戦へ。ここでGK池田咲紀子が2本のキックを止めた浦和が、激闘を制して決勝進出を決めた。

取材・写真◎森田将義


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