上写真=内野貴史のクロスとパスが2ゴールを導いた(写真◎AFC)
「仕掛けて一人釣りだして」
61分、鈴木唯人のゴールは内野貴史のクロスが導いた。76分、細谷真大の決勝ゴールは内野貴史のドリブルから右の藤尾翔太に展開して決まった。初戦でUAEから勝ち点3をもぎ取った2ゴールは、内野貴史のプレーから生まれた。
最初のゴールはクロスに対して相手が目測を誤り股を抜け、鈴木に届いて相手を切り返してかわして蹴り込んだもの。「2得点に絡んだとはいえ、唯人のゴールはラッキーでした」と内野は笑うが、狙いがあった。
「試合展開からして、前半に相手がやっていたようにラフに危ない嫌なゾーンに入れることでリズムができたり、緊張感の高い試合ではミスが起こると思っていました。日本は前半にそういうボールが少なかったので、後半は味方が見えたら入れていこうと。少しラッキーな形で得点が生まれましたが、意識していたことなので良かったと思います」
きれいに崩すことも大事。だが、国際大会の初戦という独特なゲームの流れを感じて、こちらがやられて嫌なことは相手も嫌がるという想像力で、クロスを蹴り込んだ。
「唯人があそこにいるのはちゃんと見えていて、本当のイメージではもう少し速いボールというか、直接唯人に渡ってワンタッチで決めるようなボールだったんです。でも、相手のミスになって、唯人もいい準備をしてくれました。オプションとして(右に山田)楓喜もいたし、(手前にいた細谷)真大の足元もありましたけど、手前で取られるより奥で相手が嫌がるところに、と」
2点目は右から中に斜めに持ち運んで、自分に相手の目を向けさせておいてから、右前にもぐり込んだ藤尾を使った。
「深い位置を取ることは、チャンスがあれば走り込もうとみんな言われていて、その意識がチームに根付いていたのが証明できましたね」
内野の斜めのドリブルと藤尾の斜めのランでニアゾーンを攻略した。
「あの状況では、こちらの攻撃の枚数よりも相手の守備の枚数が揃っていたんです。シンプルに低い位置、翔太のニアゾーンに入れても、サイドバックもカバー役のセンターバックもいて攻撃に厚みが出ないと思ったので、突っかけるように仕掛けて一人釣りだして、数的同数か数的優位になる状況を作りたかったんです」
ここでは冷静極まりない洞察力が生きた。そして、藤尾のクロスに細谷のヘッドがずばり。藤尾のポジションがオフサイドぎりぎりでVARチェックに長い長い時間がかけられたが、ゴールは認められた。
そしてもう一つ、このどちらも最初にボールを預けてくれたのは左センターバックの鈴木海音だった。サイドで高い位置を取った内野の足元に強くて速いキックで送り込んだ。相手に引っ掛けられればカウンターを食らうリスクもあるが、それを上回る質のボールが届いた。
「前に行けたのは隣にいたセンターバックの海音や(チェイス・)アンリ、左サイドバックの(加藤)聖がいいカバーをしてくれたから。心配なく迷いなく前に出ていけたので、チームメートに感謝したいですね」
想像力に洞察力、そしてこんなふうに全力で感謝する力が、内野の最大の魅力かもしれない。