劣勢に耐えた末の同点ゴールだった。1月11日の全国高校サッカー選手権2020決勝で、山梨学院(山梨)が青森山田(青森)に2-2に追いつくゴールを挙げたのは野田武瑠だった。背番号10の今季初ゴールが2度目の優勝へとつながった。

上写真=劣勢の中、2-2の同点に追いつく野田武瑠のゴールが優勝へと導いた(写真◎小山真司)

■2021年1月11日 全国高校サッカー選手権準決勝(@埼玉スタジアム)
山梨学院 2-2(PK4-2) 青森山田
 得点者=(山)広澤灯喜、野田武瑠
     (青)藤原優大、安斎颯馬

「がむしゃらに打ったら入った」

 12分に広澤灯喜が鮮やかに決めて山梨学院が幸先よく先制したものの、やはり青森山田は青森山田だった。後半に入って猛攻を仕掛けてきて、57分、63分と連続ゴールを浴びて逆転され、あっという間に劣勢に立たされることになった。残りは30分近くあったが、それからも青森山田の攻勢はやまなかった。

「やばいな、と思っていて、青森山田は強いし押され気味になっていたので、クマ(熊倉匠)を中心に声をかけ合ってあきらめなかった」

 78分、それが野田武瑠のゴールにつながった。

 素早いリスタートで相手の虚を突くと、交代で入っていた笹沼航紀が受けてあえて狭いスペースに縦パスを通そうと刺していった。相手に読まれて先に触られたが、こぼれ球が野田の目の前にこぼれてくる。

「(選手交代に伴って)ボランチになっていて、笹沼が入ってきて預けられる選手なので自分が前に行ったら、目の前にこぼれてきて、がむしゃらに打ったら入ったので良かったです」

 がむしゃら、と言いながらも、左足で迷いなくワンタッチで少し浮かしてGKに触られない高さに送り込んだ感性のフィニッシュ。野田にとって今大会の初ゴールで2-2に追いついて、勝負を分からなくしたのだった。さらなる猛攻撃を受けてピンチを何度も作られるが、なんとかしのいでPK戦へ。熊倉匠の活躍もあって4-2で逃げ切り、日本一!

「10番として点を取れていなかったですけど、たくさんの人がメッセージをくれて、点取れよ、がんばれよって。そうやって支えてくれる人に恩返しができて良かったです」

 支えてくれた人の一人は、もちろん長谷川大監督だ。長谷川監督は今回の3年生たちにはこんな思いを持っていたという。

「去年のレギュラーは熊倉(匠)、鈴木(剛)、中根(悠衣)ぐらいでした。一瀬(大寿)、野田も出ていませんでした。去年の先輩の壁は厚くて、でも今年は突出した選手はいないけれど、個性のある、可能性のある選手が多かったんです。役割を与えて、ちゃんと通用するんだよ、こういう武器あるんだよ、という強みを気づかせて磨かせたのは良かったことかなと思います」

 野田もそれはよく分かっていた。

「自分のことをすごく気にかけてくれていて、調子がいいときには、もっとできるぞ、とか、こういったプレーがいいから使ってるんだぞ、と言ってくれて、調子が悪くても使い続けてくれて、今日、決勝で同点ゴールを決められて感謝しています」

 山梨学院の「10」を背負うものとして、最後の最後に大仕事をしてみせた。

「みんなの顔を見て、すごいことを成し遂げたんだなという感想です。つらいこともありましたけど、頑張ってきて良かったなと思います」

 そう、野田武瑠と仲間たちは、本当にすごいことを成し遂げたのだ!


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