山梨学院(山梨)がチャンピオンになった。1月11日、全国高校サッカー選手権2020の決勝で青森山田(青森)を2-2からのPK戦で破ったのだ。最後に立ちはだかったのは、やはりこの男、熊倉匠。頼もしい一言で仲間を勝利に導いたのだった。

上写真=熊倉匠は自信のPK戦で勝って、最高の笑顔。山梨学院、日本一!(写真◎小山真司)

■2021年1月11日 全国高校サッカー選手権準決勝(@埼玉スタジアム)
山梨学院 2-2(PK4-2) 青森山田
 得点者=(山)広澤灯喜、野田武瑠
     (青)藤原優大、安斎颯馬

「今日は自分の日だなと」

 先制しながら逆転され、しかし追いついて、青森山田の猛攻を必死にしのいで、延長戦の末に2-2の引き分け。そして、運命のPK戦へ。

 その直前、山梨学院の選手たちは笑顔だった。

「泣いても笑っても最後だから、楽しんで蹴ってこい」

「外してもいいぞ、オレがいるからな」

 キャプテンでGKの熊倉匠が、仲間にそんな声をかけたのだという。

「みんな笑顔になってリラックスできてよかったんじゃないかと思います」と自らの言葉でみんなの肩の力が抜けたことを喜んだ。何より、誰よりも熊倉がPK戦に圧倒的な自信を持っていたからこそ出た一言だった。

「今大会、PK戦がこれで3回目で自信があったので、PK戦になったら止めてやると思っていました。だから、PK戦になって、今日は自分の日だなと感じていました」

 3回戦の藤枝明誠(静岡)戦で1-1からPK7-6、準決勝の帝京長岡(新潟)戦では2-2からPK3-1で勝ち抜いていて、3度目の今回も2-2からPK4-2と3戦全勝だ。しかも、藤枝明誠戦では1本、帝京長岡戦では2本、ストップしていて、決勝の青森山田戦でも2人目で左に跳んで、見事に1本を止めてみせた。

 その止めた相手が、かつての仲間だった。中学生時代にFC東京U-15深川でチームメートだった安斎颯馬。この日は青森山田に一時は逆転されるゴールを決められていた。

「最後の最後まで我慢して、どっちに蹴るかなと見ていて、体の向きでこっちかなと思ったら当たりました。3年前に同じチームで悔しい思いをしてきて、あいつと決勝でできてうれしかったし、あいつだけには負けたくないという気持ちで臨んで、最後にああいう形で勝ててよかったと思います」

 中3の冬、高円宮杯第29回全日本ユース(U-15)選手権決勝で安斎とともにサガン鳥栖U-15と戦ったが、敗れた。あのときも2-2からのPK戦だった。そこでも熊倉は1本止めたのだが、最終的に5-6で敗れている。3年後、あのときの悔しさを共有する仲間と敵味方に分かれて戦い、その盟友をストップしたことは特別な意味を持つだろう。

「本当にうれしいの言葉だけです。早い時間帯で点は取れたんですけど、青森山田の攻撃になかなか厳しい時間帯もあって、押されてはいたんですけど、全員で気持ちを切らさず頑張った結果が勝利につながったと思います」

「自分はいままでいろいろな人に支えてもらって、恩返しじゃないけどやらなきゃいけないと思っていて、きつい練習や自主練で長くボールを蹴ったり、日本一になるために頑張ってきたので、結果として報われて本当に良かったと思います」

 山梨学院に、熊倉匠あり。


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