歴史を学ぶ『日本サッカー温故知新』の第27回。この連載では日本サッカーが大きく発展した『平成の30年間』を写真と記録で振り返る。平成27年(2015年度)は復活したチャンピオンシップを制したサンフレッチェ広島がJ1優勝、日本代表は監督交代など揺れに揺れた年になった。

上写真=ガンバ大阪との激闘を制したサンフレッチェ広島がJ1優勝を果たした(写真◎上野弘明)

11年ぶりに2ステージ制とCSを導入

 この年、J1リーグで2004年以来となる2ステージ制とチャンピオンシップ(CS)が復活した。その目的は「Jリーグ今以上に国民的なコンテンツに成長し、多くの方々に関心を持ってもらい、ファン・サポーターの裾野をさらに広げるため」。ただ、その方式は複雑な面もあった。CSに進出できるのは各ステージの優勝クラブと、年間勝ち点上位3クラブ。すなわち、最大で5クラブの進出可能性があるというものだった。

 2015年は1stステージを制した浦和レッズ、2ndステージを制したサンフレッチェ広島の進出が決定。年間勝ち点上位3チームは、1位が広島、2位が浦和、3位がガンバ大阪となり、ステージ優勝チームと勝ち点上位チームが重複したために、2015年は3チームによって覇権が争われることになった。

 結果、まずCS準決勝として浦和対G大阪が行なわれ、アウェーのG大阪が3-1で勝利。そして決勝は広島とG大阪による対戦となり、ホーム・アンド・アウェーで開催された。

 第1戦は歴史に残る劇的な展開になる。アウェーの広島が終盤の15分で大逆転勝利を収めたのだ。G大阪の長沢駿に先制され、80分にドウグラスの得点と同点に追いつく。だが直後に今野泰幸にゴールを許し、再び勝ち越された。万事休すと思われたが、アディショナルタイムの90+1分に佐々木翔、90+6分に柏好文がゴールを挙げ、奇跡とも呼べる勝利を手にしたのだった。

 第2戦も広島は今野に得点され、先行されるが、76分に浅野拓磨がゴールを記録し、1-1として、そのまま試合終了。1勝1分けでG大阪を下し、2年ぶり3度目のリーグ制覇を成し遂げた。

 優勝した広島はその後、開催国枠でクラブワールドカップに出場。準決勝でリバープレートに敗れ、決勝でバルセロナと対戦することは叶わなかったが、3位決定戦で広州恒大に勝利。2012年に初参加した際に5位に終わっていたが、世界3位の称号を手にした。

 国内のカップ戦、Jリーグカップ(ナビスコ杯)は鹿島がG大阪を3-0で下し、3年ぶり6度目の優勝。クラブ通算17冠目を獲得した。また、天皇杯ではJ1のチャンピオンシップ決勝で敗れ、Jリーグカップ決勝でも涙をのんだG大阪が、準決勝で広島に雪辱し、決勝で浦和2-1で下して優勝。大会を連覇し、5度目の歓喜に酔いしれた。

■平成27年度の主な出来事(2015年シーズン)

・1月12日 FIFAバロンドール授賞式で賀川浩氏が日本人初となるFIFA会長賞を受賞
・1月23日 アジアカップで日本はUAEに敗れ、ベスト8で敗退
・2月3日 日本サッカー協会がアギーレ監督との契約解除を発表
・2月28日 ゼロックス杯はG大阪が浦和に勝利
・3月7日 Jリーグ開幕
・3月12日 ヴァイッド・ハリルホジッチ氏が日本代表監督に就任
・3月28日 なでしこリーグ開幕
・6月20日 浦和がJ1・1stステージ優勝
・7月5日 女子W杯(カナダ大会)で日本は決勝でアメリカに敗れ、連覇を逃す
・8月9日 インターハイは東福岡高が2年連続優勝
・9月27日 なでしこリーグ1部・レギュラーシリーズはINACが優勝
・10月3日 楢崎正剛が史上初のJ1通算600試合出場を達成
・10月14日 女子代表監督の佐々木則夫氏が契約延長
・10月17日 清水がJ2降格
・10月17日 中澤佑二と遠藤保仁がJ1通算500試合出場を達成
・10月31日 ナビスコ杯で鹿島がG大阪を破り、3年ぶり6度目の優勝
・11月8日 なでしこリーグ1部・エキサイティングシリーズはベレーザが優勝
・11月19日 J3に参加していたJリーグ・U-22選抜が、同シーズン限りで活動終了することが決定
・11月22日 広島がJ1・2ndステージ優勝
・12月5日 Jリーグチャンピオンシップ決勝で広島がG大阪に勝利し、2年ぶり3度目のリーグ制覇
・12月12日 高円宮杯(U-18)チャンピオンシップは鹿島ユースが初優勝
・12月15日 16年シーズンよりFC東京、G大阪、C大阪のU-23チームがJ3に参加することが決定
・12月16日 澤穂希が現役引退を発表
・12月19日 大学選手権は関西学院大が初優勝(第64回)
・12月20日 クラブW杯3位決定戦で広島が広州恒大(中国)に勝利し、3位となる
・12月27日 皇后杯(第37回)はINACが2年ぶり5度目の優勝。現役ラストマッチとなった澤穂希が決勝点
・16年1月1日 天皇杯はG大阪が2大会連続5度目の優勝(第95回・15年度)
・16年1月11日 高校選手権は東福岡高が17年ぶりに優勝(第94回・15年度)

画像: CS第1戦で決勝点を挙げた広島の柏好文(写真◎J.LEAGUE)

CS第1戦で決勝点を挙げた広島の柏好文(写真◎J.LEAGUE)

画像: CS第2戦、広島は浅野拓磨の得点で引き分けに持ち込み、1勝1分けでG大阪を下し、J1優勝を成し遂げた(写真◎J.LEAGUE)

CS第2戦、広島は浅野拓磨の得点で引き分けに持ち込み、1勝1分けでG大阪を下し、J1優勝を成し遂げた(写真◎J.LEAGUE)

画像: 仲間に手荒い祝福を受ける主将の青山敏弘(写真◎J.LEAGUE)

仲間に手荒い祝福を受ける主将の青山敏弘(写真◎J.LEAGUE)

画像: 開催国枠でクラブワールドカップに2度目の出場を果たした広島は3位入賞(写真◎Getty Images)

開催国枠でクラブワールドカップに2度目の出場を果たした広島は3位入賞(写真◎Getty Images)

画像: Jリーグカップに優勝したのは鹿島。クラブ通算17冠目を手にした(写真◎J.LEAGUE)

Jリーグカップに優勝したのは鹿島。クラブ通算17冠目を手にした(写真◎J.LEAGUE)

画像: 天皇杯はG大阪が連覇を果たした(写真◎Getty Images)

天皇杯はG大阪が連覇を果たした(写真◎Getty Images)

アギーレ・ショックとレジェンドの引退

 代表では、1月にオーストラリアでアジアカップが開催された。日本はパレスチナ、イラク、ヨルダンと同居したグループで3連勝を飾り、決勝トーナメントに進出。だが、続くUAE戦でPKの末に敗れてしまう。前回王者として臨んだ日本だったが、悔しい結果となった。

 ショックはそれだけにとどまらなかった。敗退から11日後の2月3日、JFAは前年夏に就任したばかりのハビエル・アギーレ監督との契約解除を発表。前年10月に浮上した八百長問題(リーガの試合で関与した疑惑)に関して、スペインの検察当局が告発し、バレンシアの裁判所が受理したことで、代表活動に支障をきたすとの判断から解除となった。後任には、ブラジル・ワールドカップでアルジェリアを16強に導いたヴァイッド・ハリルホジッチ氏が就任した。

 また、日本女子代表(なでしこジャパン)はワールドカップに出場。こちらも前回王者として大会に臨んだが、スイス、カメルーン、エクアドルに3連勝でグループステージを突破すると、決勝トーナメントに入っても、オランダ、オーストラリア、イングランドをいずれも1点差で下して決勝進出を果たす。相手は、4年前の前回大会で勝利し、3年前のロンドン五輪で敗れたアメリカ。メジャー大会で3回続けて同じ顔合わせの決勝となったが、なでしこジャパンは2-5で完敗。前回の再現はならず、準優勝となった。12月には、長らくチームをけん引してきた澤穂希が現役引退を発表している。

◆平成27年度の主なタイトル一覧
Jリーグ:サンフレッチェ広島
天皇杯:ガンバ大阪(第95回・15年度)
Jリーグ杯:鹿島アントラーズ
JリーグMVP:青山敏弘(広島)
Jリーグ得点王:大久保嘉人(川崎F)
Jリーグ新人王:浅野拓磨(広島)
Jリーグ最優秀監督賞:森保 一(広島)
高校選手権:東福岡高(第94回・15年度)
高円宮杯U-18:鹿島ユース
大学選手権:関西学院大
なでしこリーグ:日テレ・ベレーザ

画像: アジアカップのベスト16、UAE戦は柴崎岳の得点で1-1としたが、PK戦で敗れ、敗退した(写真◎Getty Images)

アジアカップのベスト16、UAE戦は柴崎岳の得点で1-1としたが、PK戦で敗れ、敗退した(写真◎Getty Images)

画像: UAEとの激闘は香川真司のPKは左ポストを叩き、失敗して決着。悔しい結果となった(写真◎Getty Images)

UAEとの激闘は香川真司のPKは左ポストを叩き、失敗して決着。悔しい結果となった(写真◎Getty Images)

画像: 選手に声をかけるアギーレ監督。この11日後、関与が疑われていた過去の八百長問題で代表活動に影響が及ぶとの判断から、日本協会から契約を解除されることになった(写真◎Getty Images)

選手に声をかけるアギーレ監督。この11日後、関与が疑われていた過去の八百長問題で代表活動に影響が及ぶとの判断から、日本協会から契約を解除されることになった(写真◎Getty Images)

画像: 前回王者として女子ワールドカップに臨んだなでしこジャパンは、決勝に進出した(写真◎Getty Images)

前回王者として女子ワールドカップに臨んだなでしこジャパンは、決勝に進出した(写真◎Getty Images)

画像: 2015年大会がレジェンド、澤穂希にとって最後のワールドカップになった(写真◎Getty Images)

2015年大会がレジェンド、澤穂希にとって最後のワールドカップになった(写真◎Getty Images)

画像: なでしこジャパンは決勝でアメリカに敗れたものの、11年W杯、12年五輪、そして今大会と、メジャー大会で3回連続決勝進出は素晴らしい結果だった。左から大野、有吉、岩清水、阪口(写真◎Getty Images)

なでしこジャパンは決勝でアメリカに敗れたものの、11年W杯、12年五輪、そして今大会と、メジャー大会で3回連続決勝進出は素晴らしい結果だった。左から大野、有吉、岩清水、阪口(写真◎Getty Images)

画像: レジェンド・澤穂希はこの年で現役を退いた。最終戦となった皇后杯決勝(INAC 1-0 新潟レディース)では自らのゴールで花道を飾った(写真◎Getty Images)

レジェンド・澤穂希はこの年で現役を退いた。最終戦となった皇后杯決勝(INAC 1-0 新潟レディース)では自らのゴールで花道を飾った(写真◎Getty Images)

Jリーグ順位表(2015シーズン)
順位チーム
1広島7434235643
3G大阪6334189719
2浦和7234219429
4FC東京6334196912
5鹿島59341851116
6川崎F57341761114
7横浜FM55341510913
8湘南483413912-4
9名古屋463413714-4
104534129133
11鳥栖403491312-17
12神戸383410816-5
13甲府373410717-17
14仙台35349817-4
15新潟343481016-17
16松本28347720-24
17清水253451019-28
18山形243441218-29
※年間順位

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