上写真=左アウトサイドで先発した関根貴大だったが、勝利をつかむことはできなかった(写真◎福地和男)
これまでで一番能力の差を感じた
敗戦を告げる終了の笛が鳴り響くと、浦和レッズの選手たちは次々とピッチ上でうなだれ、倒れ込んだ。5万8109人が詰めかけた埼玉スタジアムに喪失感が漂うなか、背番号41だけは悔しさを押し殺し、いち早くファン・サポーターの待つゴール裏へを歩みを進めた。
アカデミーからの生え抜きである関根貴大は、深々と頭を下げた。試合後、報道陣の前に目元を赤くしてを現れると、言葉を絞り出した。
「本当に申し訳なかったです。あれだけの環境をつくってもらったのに……。僕は失点に絡みましたし、チャンスも生かせなかった。その思いもあって、頭を下げさせてもらいました」
初めて立つ決勝の舞台だった。2年前のACLは、準々決勝の前にドイツのインゴルシュタットへ移籍。仲間が戦う姿を遠い場所から眺めていた。ドイツでは出場機会に恵まれず、「俺はここでいったい何をしているんだ」と思い悩んだこともあった。
あれから2年。今年の夏に欧州から浦和へ復帰。通い慣れたクラブハウスに戻ってくると、見たことのない写真が飾られていた。そこに写っていたのは、2017年の優勝セレモニーで歓喜する仲間たちだ。懐かしさを覚えるよりもある感情がわき出て、心に誓った。
「2年前は僕が抜けたからACLで優勝したのかなって。だからこそ、自分が帰ってきた今季は絶対にACLを制覇したい」
ACLに懸ける思いは人一倍だった。それだけに思いがこみあげた。力強いドリブルで襲いかかってくるペルー代表のアンドレ・カリージョに懸命に体をぶつけたが、弾き飛ばされてピッチに転がった。カウンターでは孤立無援になることが多く、得意のドリブルも封じられた。力不足を痛感した。
「これまで対峙してきたなかで、一番能力の差を感じました。何もできなかったです。自分の弱さを知る試合になりました」
それでも、失意に暮れて下を向いてばかりはいられない。国内リーグに目を移せば、現在J1リーグでは13位。入れ替え戦プレーオフ圏内の16位との勝ち点差は4ポイントしかない。残り2試合に向けて、必死に気持ちを切り替えた。
「ACLはこれで終わり。僕らはここからJ1残留を決めないといけません」
11月30日、味の素スタジアムで2位FC東京との大一番に臨む。
取材◎杉園昌之 写真◎福地和男