11月19日、パナソニックスタジアム吹田で日本代表対ベネズエラ代表の試合が行なわれ、日本が1-4で敗れた。代表常連の選手たちを要所に起用して試合をスタートした日本だったが、相手のスピードとパワー、正確な技術の前に防戦一方となると、ミスも重なり、前半で4失点してしまった。後半、選手を入れ替えて攻勢をかけたものの、反撃は1点どまり。文字通りの惨敗で、A代表としては2019年の最終試合を終えることになった。

上写真=前半の日本は防戦一方。中島のドリブルも素早いプレッシャーの前に封じられた(写真◎早浪章弘)

■2019年11月19日 キリンチャレンジカップ2019
 日本 1-4 ベネズエラ
 得点:(日)山口蛍
    (ベ)サロモン・ロンドン3、ジェフェルソン・ソテルド

国際舞台で通用するかしないかの見極め

 ホームゲームとは思えない低調な内容だった。スピード、パワー、技術、運動量、そして森保一監督がチームの立ち上げから選手に求めてきた意欲の面でも、ベネズエラに圧倒され、完敗を喫することになった。とくに前半はチームコンセプトである連係連動もハードワークも見られず、ボール奪取後にパスミスが頻発し、易々と相手にボールを渡してしまう場面が散見した。

 相手の方が地力で勝る状況で繰り返しミスを犯せば、結果は推して知るべしだった。前半のうちに4失点を喫したのは、森保ジャパンでは初めてのこと(コパ・アメリカのチリ戦は前半1失点、後半3失点の●0-4)。日本代表としても1954年のアジア大会、インドネシア戦(●3-5)以来、65年ぶりの屈辱だった。

 繰り返しクロスを上げられ、ゴールを許しながらも修正できなかった。ボールホルダーへの距離が遠く、寄せが遅れるため、何度もサイド攻撃を許した。なす術なく45分を終えて日本の選手たちがロッカールームに引き上げる際にはスタンドからブーイングが起こった。これまた森保ジャパンでは、ほとんど見られなかった光景。それだけ前半の内容がひどかったということだろう。

 後半開始から鈴木武蔵に代えて古橋亨梧、植田直通に代えて三浦弦太を投入し、日本は積極性を示すようになった。ポジションを2トップから1トップに変えた浅野拓磨が縦を突き、攻撃をけん引すると左MFからトップ下にポジションを移した中島翔哉も持ち味を示して相手ゴールに迫った。69分にはゴールも生まれている。

 左サイド深い位置で中島がキープし、途中出場の永井謙佑に渡すと、永井がグラウンダーのクロスをゴール前へ。タイミングを合わせて山口蛍が右足を振り抜き、ボールは相手DFに当たってゴールに吸い込まれた。

 前半に比べて後半は持ち直し、日本が連動性を高めたのは間違いない。しかしながら運動量とテンションの落ちたベネズエラから奪ったゴールは、この1点のみに終わった。

 ホームで1-4という結果は当然ながら看過できるものではないだろう。ただし、今回の試合はあくまでテストマッチであり、チームが何を試し、その結果、何を得たのかについても見なければならない。

 指揮官は試合を振り返り、課題について言及した。

「代表で活動するときに、国際大会や世界の舞台で勝っていくためのインテンシティー、プレーのクオリティーというものをもっと選手に働きかけていきながら、選手が肌で感じられるような経験をしてもらえるようにしたいと思っています。代表の経験を持ち帰ってもらい、所属チームでさらに上げないといけない部分にトライしてほしいと思います」

監督として準備の部分で問題があった(森保監督)

 11月シリーズを前に、森保監督は選手層の拡充を狙いの一つに挙げていた。この試合では、実力国との対戦を通して、国際舞台で力を出せる選手か否かをテストした面があっただろう。それと同時に、今年1月のアジアカップ決勝で痛感した対応力や修正力の欠如という問題が改善されているかどうかも把握したかったはずだ。

 ベネズエラ戦でテストした(=出場した)選手は以下の通り。

GK川島永嗣、DF室屋成、植田直通(46分、三浦弦太)、畠中槙之輔、佐々木翔、MF原口元気(82分、井手口陽介)、柴崎岳、橋本拳人(65分、山口蛍)、中島翔哉、浅野拓磨(65分、永井謙佑)、FW鈴木武蔵(46分、古橋亨梧)。

 代表経験の浅い先発メンバーは、相手の圧力の前になす術がなかった。そして経験豊富な柴崎岳は試合後にその状況を修正できなかったことに対して、自身の責任を口にした。

 この試合で、日本は期待した成果を得られなかった。指揮官は今回の敗戦が今後のプランに与える影響を問われて、こう答えている。

「長期的なプランに影響があることは基本的にはないと思っていますが、活動を通して多くの選手を見ていく中、今後どの選手がこのグループの中に残っていくのかというところはあるのかなと。それは活動してみないと分からないことですし、いいこともそうでないことも含めて、いろんなことが見えた。ただ、活動としてはプランに影響はないと思います」

 テストの合否の『否』の部分を把握できたという一点において、今回の試合は意味があったのかもしれない。むろん、その否を踏まえた上で、これからどんなアプローチでチームを強化していくのかが重要になるのだが。

「うまく結果につながらなかったのは、監督として準備の部分で何か問題があったのではないのかと。トレーニングの内容で言えば、相手のプレッシャーがきつい中で攻撃の形を作るという部分で、連係連動のトレーニングをしましたが、もっとクオリティーを求めてプレッシャーの中でプレーすること、試合に近い、あるいは試合よりも難しい形でトレーニングすることが必要だと思っています」

 森保監督は11月シリーズでW杯予選のキルギス戦に臨んだチーム、U-22代表、そして今回のA代表と、3つのチームを率いた。そもそも、その活動に無理はなかったのかと、兼任監督の難しさを指摘する声もある。

「達成できた成果としては、3分の1は達成できて、3分の2は達成できなかった。1勝2敗という結果を受けて、すべて勝つつもりで準備してメンバーを編成して臨みましたが、勝利につながったのは1試合で、2連敗したという結果がすべてだと思います。U-22日本代表のコロンビア戦については、アンダー世代だが、FIFAランキング10位の世界の強豪と相手のコンディションが良い中、相手のメンバーも良い状態で戦えました。今回のベネズエラも直近の試合がなくなってコンディションが非常に良い中で今日の試合ができました。世界の強豪に勝っていくために、われわれが越えないといけない壁、追いつかないといけない相手の力を感じながら試合ができました。負けて良しはないが、敗戦の中にも成長できるものを得られたと思う。こういう強いチームをキリンチャレンジカップで呼んでもらって、強化の試合をさせていただけるのは非常にありがたいことだと思っています」

 今後も層の拡充作業と修正力を得るための取り組みは続けられる。テストに失敗はつきものだが、継続性やアプローチの正しさが見られなければ、スタジアムに集うファン・サポーターも、テレビで応援する人々も、ただただ落胆することになる。そのあたりのさじ加減が代表チームの難しさだが、今回は落胆の方が大きかったのは確かだろう。失敗が強調されるテスト内容だった。

 2019年国内最後のA代表の試合は、惨敗に終わった。この敗戦を踏まえて『良薬は口に苦し』とすべく、進んでいくよりほかない。次の代表戦は12月10日から韓国で開催されるEAFF E―1サッカー選手権。リーグ戦中の海外組を招集できないため、多くの国内組が招集されると予想されている。おそらく層の拡充を図る機会になるだろう。日本はどんな戦いを見せ、森保監督どんなアプローチでチームを強化するのか、注目される。

取材◎佐藤 景 写真◎早浪章弘、毛受亮介

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