上写真=優勝へと近づく先制ゴールを決めた榊原(写真◎サッカーマガジン)
■2019年11月17日 2019Jユースカップ決勝(ミクニワールドスタジアム北九州)
G大阪ユース 0-4 名古屋U-18
得点者:(名)榊原杏太、村上千歩、牛澤健、松本皐誠
「勝てば勝つほどプレッシャーがかかる」
時計の針が前半30分を回った頃、G大阪ユース陣内で相手選手のパスミスを奪った名古屋U-18のMF榊原杏太が、ドリブルでペナルティーエリアに進入。相手DFを一人かわし、飛び出してきたGKと交錯した次の瞬間に、主審のホイッスルの音が鳴り響く。
「絶対にゴールを決めてやろうという気持ちで、勢いよく、(ドリブルで)抜いて行って、(相手GKに)足を引っかけられてPKをもらえました。ラッキーだったなと思います」
主審がペナルティースポットを指さすと、榊原は何やら味方に声をかけ、ボールを手に取った。
「千歩(FW村上)が得点王を狙っていたし、瑛琉(DF新玉)も狙える位置にいたので、(PKキッカーは)その二人になる可能性もあった。でも、僕がもらったので(二人に)『蹴る』と言って、蹴らせてもらいました」
ゆっくりと助走をとって相手GKと駆け引きし、G大阪ユースのGK駒井幸弘が飛んだ方向と反対のゴールネットに沈めた。
「Jユースカップの試合前は、必ずPKの練習をしていました。(来季)トップチームに昇格する三井大輝とか、ジョン(東)とか、レベルの高いキーパーを相手に毎週練習しているので、自信を持って蹴ることができました」
こうして、32分に名古屋U-18のゴールラッシュの口火を切る先制点が生まれた。それはまた、『優勝』の二文字を手繰り寄せるゴールでもある。試合を動かす、大きな価値を伴った得点を奪った榊原は、試合後に『MVP』に選ばれた。
「(MVPを)少し狙っていたし、(手応えは)ありました。(今大会の)チームにはケガ人もいて、『僕がやらなければいけない』という強い責任感を持って臨んだ大会でした。そういった中で、調子がいいと見られよかった。そして、(MVPを)取れたことはうれしいです」
榊原は中学時代、清水エスパルス・ジュニアユースでプレーし、高校入学と同時に名古屋グランパスの門を叩いた。それだけに、福島県・Jヴィレッジで行なわれた準々決勝広島ユース戦(〇3-1)の後には、同じ会場で試合に臨んだ清水ユースのスタッフから声をかけられる場面もあった。
「エスパルスの人たちに、とても感謝しています。今でも僕の様子を聞いてくれたり、すごく支えてもらっている。だから、グランパスの人達にも、エスパルスの人達にも、恩返しをできればいいなと思っています」
多くの人への感謝を抱いて、大会MVPの称号を得た。「1試合1試合、勝てば勝つほどプレッシャーがかかり、今も感じたことのないようなプレッシャーがある」と、“常勝”の難しさを実感しつつも、「それを楽しみながら、これから続く(高円宮杯プレミアリーグでの)負けられない試合も絶対に勝つ」と意気込む。
「またプレミアリーグも優勝できるように頑張ります」
名古屋U-18の「8番」を背負うレフティーは、“ユース3冠”という偉業達成に向けて、これからもどん欲に勝利を求める。
取材◎小林康幸