上写真=大記録を樹立した浦和の興梠(写真◎J.LEAGUE)
■2019年9月1日 J1リーグ第25節
湘南 1-1 浦和
得点者:(湘)梅崎司 (浦)興梠慎三
チームメイトのおかげ(興梠)
浦和の興梠慎三がJ1で8年連続2ケタゴールを達成した。Jリーグ史上初の偉業である。7年連続の記録を持っていた佐藤寿人(現千葉)、エジミウソン(元浦和ほか)を抜いて、単独でその名が歴史に刻まれることになった。
9月1日の湘南戦での働きぶりも圧巻だった。好機を逃さず、きっちり仕事をこなす。3分、ニアサイドに走り込むと、低いクロスをつま先で突いて、さらり軽く流し込んだ。力ひとつ入っていないようだった。
「個人の記録よりも優勝するために戦っている。記録はあとからついてくるものだから」
少し頬を緩めていたが、テンションが高いわけでもない。自らの功績をひけらかすことよりも、仲間への感謝を口にした。その言葉に力がこもる。
「武藤がいいボールをくれた。(これまでの得点も)すべてチームメイトのおかげ。僕は自分ひとりで突破してゴールを決めるタイプではないから。ラストパスを仕留めるのが僕の持ち味」
浦和でクラブ通算歴代最多得点記録を更新したときも、アシストしたのは相棒の武藤雄樹。同じFWとして、リーグ戦で無得点を続く同僚への気遣いを忘れない。ここ最近は、自らが点を取ったあとにふと漏らす。
「武藤にそろそろ点を取らしてやりたい。PKがあったら蹴らしてやりたい。あいつが取らないとチームものってこないから」
浦和のエースは、ひとりよがりの点取り屋ではない。周囲を生かすのも持ち味。絶妙なポストプレーで攻撃の起点をつくり、仲間のゴールをお膳立てするのはお手の物だ。気遣いは言葉だけではない。精神的な支柱としても、キャプテンマークを巻く30番の存在感は増すばかり。
「すぐにルヴァン杯、ACLもある。リーグ戦は厳しい順位にいるけど、一つでも上に行きたい」
頼りになる大黒柱がチームを引っ張っていく。
取材◎杉園昌之