上写真=今年のU-20ワールドカップで日本のゴールマウスを守った若原。大会が終わり、所属する京都でさらなる成長を期す(写真◎Getty Images)
払拭することができない、U-20韓国戦の記憶
天皇杯2回戦・水戸戦後に取材エリアに現れた若原智哉の表情は晴れない。所属する京都が試合に敗れ、天皇杯から敗退することとなった無念もあるだろう。また、出番が訪れなかった悔しさもあるかもしれない。それでも若原は立ち止まり、『あの日』からのことを打ち明けた。
「なかなか、気持ちの切り替えができませんでした」
“試練”のU-20ワールドカップでの日韓戦から、1カ月が経とうとしていた。
「こっちに帰ってきて『また頑張ろう』という気持ちになったんですけれど、やっぱりU-20ワールドカップのことを全然忘れられなくて……。あそこ(ラウンド16)で負けるつもりはなかったので、もうなんか、すべてが終わったような……。『燃え尽き症候群』みたいになっちゃいました。(京都に合流してからも)引きずったままプレーしていたように思います」
今回のU-20ワールドカップには、ゴールデングローブ(最優秀GK)賞を獲得したウクライナのアンドリー・ルニン(レガネス=スペイン※レアル・マドリードからローン移籍)を筆頭に、イタリアのアレッサンドロ・プリッツァーリ(ミラン)、フランスのアルバン・ラフォン(フィオレンティーナ=イタリア)ら、世代屈指の錚々たるGKがそろった。その中で、日本の守護神も出色のパフォーマンスを見せた。4試合でわずか2失点。初戦のエクアドル戦(△1-1)では、相手のPKを止める活躍もあった。
「U-20ワールドカップのときは、めっちゃ気持ちよくプレーできていたんですよ。僕自身、ミスはそんなになかったと思うし、今までの中でも一番良かったんじゃないかな、というくらいでした。だからこそ、ちょっと切り替えられなかった……」
自身の調子が良かったぶん、なおさらU-20ワールドカップからの敗退は受け入れ難いのだろう。大会で喫した2失点のうち、一つはオウンゴールなのだから、相手のシュートを止められなかったのは、たった一度だけ。ただ、その“一度”が命取りとなり、アジアのライバルである韓国に敗退へと追いやられてしまった。
「今でも覚えていますよ。(韓国のFWに頭で)すらされて、あんなところ(コース)に(シュートが)行くとは思っていなかったですね」
ラウンド16・韓国戦の84分、日本の右サイドからチェ・ジュンにクロスを上げられ、ゴール前で待ち構えていた長身FWオ・セフンにヘディングシュートを決められた。若原は必死に両手を伸ばして防ごうと試みたが、ボールは針の穴を通るかのように絶妙なコースへと転がった。