成長の原動力となる、同世代のライバルの存在
帰国後も、ルブリンの地で味わった失意をなかなか払拭することはできなかった。その間、南米ブラジルの地では、同世代のライバルがコパ・アメリカでA代表デビューを飾った。「サコ(大迫敬介)から刺激を受けているんで、早く追いつきたい。そういう気持ちはあるんですけれど……」と焦燥感も募る。
広島に所属する大迫敬介は、若原と同じ1999年生まれ。今季のリーグ戦では開幕戦からスタメンに名を連ね、19歳でA代表入りを果たした。一方、若原は今季、まだ京都のトップチームでの出場がない(7月3日時点)。昨季はルーキーイヤーながらリーグ戦12試合に出場したが、今季は清水圭介、加藤順大という経験豊富な両GKの牙城を崩せず、第3GKに甘んじている。
ただ、各チームに一つしかないGKのレギュラーポジションを若くしてつかむのは、容易なことではないだろう。実際に今年6月までのJ1・J2リーグ戦では、99年度生まれでトップチームの試合に出場したのは大迫のみだ。沖悠哉(鹿島)、猿田遥己(柏)、長谷川凌(水戸)といった、若原が高校3年時(京都U-18)に高円宮杯プレミアリーグEASTで戦ったライバルたちも、今季はまだ公式戦出場の機会を得られていない。日々、チームのトレーニングで研鑽する。
鹿島で熾烈なレギュラー争いに臨む沖は以前、「すでにトップチームで出ている選手や、U-20代表に入っている選手の活躍は刺激でしかない。(今は)アントラーズで自分の実力を伸ばしたい」と話していた。特に競争が激しいポジションで、ひたすらトレーニングを重ねる日々の中で、同世代を意識することも向上への原動力となっているのだろう。
また、若原がU-20ワールドカップを戦っていた5月末に、沼津へと期限付き移籍した長谷川(7月1日に水戸復帰)も、「(大迫や若原といった)代表でプレーしている同世代は目標です。自分も頑張ります」と決意を新たにしていた。若原がポーランドで見せた活躍は、同世代に刺激を与えている。
「そんなふうに思ってくれていたんですね」とライバルたちの思いを知り、若原の目の色が変わった。
切磋琢磨できる同世代のライバルがいる。トップチームでのレギュラー奪取、東京五輪出場、A代表定着。それぞれ大きな目標を胸に、日々汗を流している。若原もライバルたちに負けてはいられないだろう。同世代でただ一人味わったU-20ワールドカップの経験を糧に、自らの能力をさらに磨いていかなければならない。
「今後はオリンピック代表に食い込んでいくためにも、早く試合に出たい。せっかくU-20ワールドカップで試合に出させてもらったし、(日本のゴールマウスを託された)責任もあるので、もっと頑張らないといけない。フィジカル面なども見つめ直し、もっとサッカーに集中します」
若原は再び前を向き、中学時代から育ってきたクラブでのさらなる成長を誓った。
文◎小林康幸