大槻毅新体制は初陣から2戦連続で後半アディショナルタイムにゴールを奪い、負けなしの「ミラクル劇場」が続いている。
上写真=終了間際のゴールで鳥栖を破り、サポーターと勝利を喜ぶ浦和イレブン(写真◎J.LEAGUE)
■2019年6月15日 J1リーグ第15節
浦和 2-1 鳥栖
得点:(浦)宇賀神友弥、興梠慎三 (鳥)安庸佑
「きょうはジョーカーでいく」
リーグ戦で浦和の勝利を称える歌が、埼玉スタジアムに響き渡ったのはいつぶりだろうか。さかのぼること約2カ月。4月20日の神戸戦(○1-0)である。
6月15日は、試合前から客足も遠のく大雨(2万8081人)。大槻毅・新監督はピッチサイドぎりぎりまで出て、派手なジェスチャーを交え、大きな声を張りげる。感情的に見えて、采配は実に冷静で綿密。選手交代については多くを語ろうとはしないが、ゲームの展開を読みながら的確に切り札を投入した。
「終盤、オープンな展開になると予想していた」
スピード自慢のドリブラー、マルティノスの出番である。試合前から「きょうはジョーカーで使うから準備しておいてくれ」と前もって本人に伝えていた。この采配がぴたりと当たる。後半アディショナルタイムに自陣でボールを持ったマルティノスは、ドリブルでぐんぐん前に進み、あっという間に敵陣に侵入。ラストパスは相手に当たったが、うまくボールが興梠の前にこぼれた。
「いい感じに行ってくれたよ。結果、オーライだね」
本人はジョーカーではなく、スタメンへのこだわりを口にしていたが、この日はこれで結果、オーライ。もちろん、大槻監督の口からそんな言葉は出てこない。すべて計算どおりと言ったところか。
前節の川崎F戦では途中から投入した森脇良太が、終了間際に同点ゴールを挙げた。交代策が2試合連続ではまれば、偶然とは言えないだろう。
ただ、指揮官は一歩引いて、冷静に現状を分析することも忘れない。内容に満足しておらず、「もっと積み上げていかないといけない」と勝って兜の緒を締めた。ひとまずホームの連敗は「3」でストップし、9位に浮上した。
取材◎杉園昌之