久保建英が代表デビューを飾った。18歳と5日での代表キャップ獲得は市川大祐(17歳と322日)に次いで史上2番めに早い記録。ただし、そのプレーで示したものは、史上一番の期待感だったのかもしれない。久保は約23分間のプレーながら、何度も観衆を沸かせ、大いなる可能性を示してみせた。

上写真=得意の形からシュートを放つなど、久保建英はわずかな出場時間ながら持ち味を発揮した(写真◎小山真司)

■6月9日 キリンチャンレンジカップ2019
 日本 2-0 エルサルバドル
 得点者:(日)永井謙佑2

ボールを持つたびにスタンドが沸いた

 開始60分を過ぎたころだ。ゴール裏でアップを続けていた久保建英がベンチに呼ばれた。ついに出場機会が訪れたことを確認したスタンドのファンがどよめく。そして67分、中島翔哉とともに、ピッチに入った。原口元気に代わって中島が、南野拓実に代わって背番号27番の久保が登場した。

 ポジションは3-4-2-1から4-2-3-1にフォーメーションを変えたチームの2列目中央。つまりはトップ下だ。最初のプレーは右サイドハーフの堂安律からパスを受け、リターンパスを前方へ。堂安のドリブルが封じられて決定機とはならなかったが、流れを切らずにボールを扱い、違和感なくゲームに入ってみせた。

 観衆が沸いたファーストシュートは、73分のこと。後方から送られたアバウトなボールを大迫勇也が自陣に下がりながら収めると、入れ替わるように前に出る。大迫のスルーパスを受け取るや、右サイド深くまでドリブルで進み、左足で細かくボールを触りながら相手守備者の2人の間を縫うようにすり抜け、エリア内に進入。左足で放ったシュートはGKに止められたが、今季、FC東京で見せている得意の形をしっかり披露し、状況判断の良さと優れた技術を示してみせた。

「(あのプレーは)最初のほうだったので、行こうかなと思って。2人の間に狙っていったらスルっという感じで抜けて。シュートは巻こうと思ったんですけど、ちょっと浮き上がらなかった」

 初めての代表戦で見せた持ち味はこれだけにとどまらない。その後も繊細なボールタッチや周りを生かすプレーで会場を沸かせていった。

 83分には攻撃参加した室屋成に絶妙のタイミングでボールを届けた。右のタッチライン際でボールを収めると、裏のスペースへ走り込む室屋のスピードとマークする相手DFの動きを正確にとらえ、相手の足が出ないタイミングを見計らってパスを通している。その感覚は、代表のピッチの中にあっても独自の輝きを放っていた。

 そしてアディショナルタイムのFKを獲得した場面だ。ドリブルする中島からパスを受けるとそのスピードを殺さないようにダイレクトでボールを前方の大迫へ送る。大迫もダイレクトで走り込む中島へパスすると、たまらず相手がファウルした。
 
 この場面を振り返った久保の言葉がまた、堂々としている。

「(中島翔哉選手は)俺と似たような感じというわけではないですけど、だいたい(ボールを)持った瞬間、何を考えているかというのは、まあ、あのときは分かったので、そうだろうなと思って、ああやってつなげていったわけですし。大迫選手は誰が見てもわかるというか、(実力が)抜けていますし。何でもできると言うか、ボールもつなげれるし、前も向けるしっていう。あんな選手がいたら、やりやすいです」

 この一連のプレーで獲得したFKについては「俺がもらっていたら俺が蹴っています。そこはもう、もらった人が蹴るべきかなと思います」。判断力や技術に加え、メンタルもまた、これがデビュー戦とは到底思えない水準にあった。

持っている技術や賢さが出ていた(森保監督)

画像: 1トップの大迫とトップ下に入った久保は縦関係を形成。連動性も上々だった(写真◎小山真司)

1トップの大迫とトップ下に入った久保は縦関係を形成。連動性も上々だった(写真◎小山真司)

 決定的な仕事こそなかったが、大いなる可能性を感じさせたのは間違いない。森保一監督の評価も上々だった。

「プレーの評価は、伸び伸びと自分の特長を生かしてプレーしてくれたのかなと思います。周りの選手とも、試合の中でのプレー機会は初めてでしたが、スムーズに連係連動できる、彼の持っている技術や賢さという部分が出ていたと思う」

 18歳と5日での代表デビューは日本代表史上2番めに早い記録だが、本人には、そのことに何ら感慨はない。世界的に見れば、18歳は特別若いわけでも、早すぎるわけでもないからだ。

「こんだけうまい選手たちが集まれば、(自分が)一人くらい入っても、別に違和感はなくやれるだろうなとは思っていたんですけど、そういう意味では短い時間にはなりましたけど、自分がやれることは示せたのかなと思います」

 さらに、今後についてはこんな言葉を残した。

「(ピッチに入った)最初とか、みんなも気をつかってくれるというか、小林選手がパスをくれて、冨安選手もパスをくれて、自分の特長を引き出そうというか、気持ちよくプレーさせようという意図が感じられました。そうやって助けてもらうのはすごくいいことだど思いますけど、これからはもう試合を一回やっているので、自分の力でいいプレーを出していければなと」

 デビュー戦はあくまで通過点。気持ちはすでに、次に向いている。久保が見ているのは、もっと高みだ。17日にチリとの初戦を迎えるコパ・アメリカで強豪国と対戦することにも、臆するところはまったくない(20日ウルグアイ、24日エクアドル)。

「強い相手のほうがいいので。そこで活躍できれば自信になる」

 多くのファンがなぜ久保に注目するのか。なぜ期待するのか。この日のプレーを見て、本人の言葉を聞けばよくわかる。

 広い視野、優れた技術、強いメンタル。それらすべてを備えた18歳に、未来を期待しないほうがおかしい。

取材◎佐藤 景 写真◎小山真司


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