豊田スタジアムで行なわれたトリニダード・トバゴ戦で、森保一監督はA代表で初めて3バックシステムを採用した。キャプテンであり、ディフェンスリーダーでもある吉田麻也(サウサンプトン)を体調不良で欠く中、最終ラインの中央を任されたのはフランス1部リーグで活躍する昌子源(トゥールーズ)だった。

上写真=最終ラインを統率した昌子源(写真◎早浪章弘/BBM)

■2019年6月5日 キリンチャレンジカップ2019
日本 0-0 トリニダード・トバゴ

「4バックでも3バックでもやれたら強い」

 昌子の大きな声は、スタジアムの3階にある記者席まで届いた。「僕が中心になって、しっかりコントロールしてやってくれと監督から言われていたので」。キックオフから試合終了まで、絶え間なく味方に指示を送り続けた。ピンチを迎える場面もあったが無失点で乗り切り、「最低限のことはできたんじゃないかな」と、一定の満足感を示した。

 今年1月から所属するトゥールーズでは主に3バックの右を務め、中央のポジションは「1回か2回やったくらい」という。元来は対人の守備で持ち味を発揮するタイプだ。それでも、この試合では「僕が前に行くより、カバーリングの意識を強く持った」と求められる役割を理解し、冨安健洋(シントトロイデン)、畠中槙之輔(横浜FM)の両ストッパーを動かしながら、トリニダード・トバゴの攻撃に冷静に対応した。

「4バックやったら近いカバーリングが多いけど、(3バックでは)横68メートルを頑張ってカバーしようと思っていた。難しいけど、いろんなトライというか、オプションがあったら強いと思う。4バックでも3バックでもやれたら強いと思うし、試合の途中で変えられても強いと思う。そういうトライは非常に良かったのではないかと思います」

 チームとして初めてのトライに及第点を与えながら、もちろん課題も認識している。トリニダード・トバゴの両サイドハーフは攻め残ることが多く、相手のアタッカーに対して同数で守る場面が何度か見られ、後半10分には縦パス1本でFWレビ・ガルシアに突破を許した。GKシュミット・ダニエル(仙台)の好守で失点を免れたが、「ああいうのは実質、1対1になっちゃうから前で潰してもらうか、僕のところで早めに潰すというのを意識してやりたい」と、修正すべき点を挙げる。

 最終ラインの数的優位を保つために、ウイングバックを下げて5バック気味に守ることがひとつの解決策だが、そうするとチームの重心が後ろに傾き、攻撃面に弊害を及ぼすことになる。昌子もそのことは重々承知しており、「ウイングバックをどう扱うかによって、だいぶ変わると思う」と、新システムにおける両翼の働きについても言及した。

「守備的にやるとサコくん(大迫勇也)への負担はもっと掛かるだろうし、できるだけ(長友)佑都くん、(酒井)宏樹くんを前にしたかった。後ろ3枚で攻め残りも含めた相手のFWを抑えて、それで厚みのある攻撃を作りたい。いろんなバリエーションを、ウイングバックも使いながらやっていければ、4バックとは違う前への厚みが出るんじゃないかなと思う」

 森保監督の代名詞ともいえる3-4-2-1システムは、今月3日の練習から取り組み始めたばかりで、「完成度はまだまだ」というのも当然だろう。それでも昌子の表情は明るく、新たな挑戦に手応えをつかんでいる様子だった。

取材◎多賀祐輔 写真◎早浪章弘/BBM


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