広島での前日会見に臨んだ本田。クラブの選手として日本でプレーすれば12年ぶりになる
写真◎石倉利英
メルボルン・ビクトリー(オ―ストラリア)の本田圭佑が3月11日、明日12日に行なわれるAFCチャンピオンズリーグ(ACL)のグループステージ第2戦、広島戦の前日会見に臨んだ。試合への意気込みのほか、発生から8年目を迎えた東日本大震災への思いや、2020年東京五輪についてもコメントしている。
「原爆ドームにも足を運んだ」
ACLのアウェーチームの前日会見としては異例とも言える、約50人の日本の報道陣が詰めかける中で行なわれた前日会見。会見場に姿を現した本田は、まず試合への意気込みを聞かれて「変な感じですよね。日本代表として日本でプレーすることは、これまで何度もあったわけですけど、今回は日本人の僕がオーストラリアのクラブで、日本のクラブを相手にするのは、すごく不思議な感じがしています。でもすごく楽しみですし、明日はいい試合を見せたいと思います」と語った。対戦相手の広島については「チームとして、すごく組織的にプレーする印象があります。誰かに頼った戦術ではなく、誰が出ても一定以上の成果を挙げられるような戦術でチームを作っているな、という印象を持っている」とコメントした。
メルボルン・ビクトリーについては「ご存じの通り、オーストラリアのリーグはJリーグより歴史が浅く、Jリーグに追い付け・追い越せで頑張っているリーグという立ち位置。(メルボルンは)オーストラリアで優勝できなかったが、昨年ケビン(・マスカット監督)とともに優勝を果たし、こうやって数少ない、オーストラリアのサッカーを見せる機会がある」と語り、「Jリーグのような、多くのブラジル人選手が築いてきたような歴史のような形は、まだあまりない。とはいえオーストラリアには、ラグビーの歴史があり、フィジカル的にはものすごく強く、独特な、スピーディーなサッカーをするチームが多い。(明日は)そこに僕が、少し僕なりの経験をミックスさせながら挑む試合になると思う。もちろん勝ち負けにもこだわりたいが、内容にもこだわりたい」と意気込みを語った。
また、会見当日が東日本大震災から8年の当日であることを問われると「サッカーファンだけでなく、普段サッカーを見ない人、8年前に関係して、まだ傷が癒えていない人にも、スポーツという側面からですが、少しでも良い影響を与えられれば、サッカー選手冥利に尽きると思っています」と答えた。「早いですよね。もう8年か、と率直に思います」と続け、「同時に、広島にいて原爆ドームにも足を運びましたが、(終戦から)70年以上がたっている。試合をしに日本に帰ってきましたが、タイミング的にはサッカー以外のことも考えさせられる機会があり、いい意味で人として、サッカー選手として、今後どうやって生きていくのか、考えさせられる訪問になっています。ACLに感謝したいです」と、サッカー以外のこともコメントしている。
さらに、日本代表のベスト16進出に貢献した昨年のロシア・ワールドカップ(W杯)の経験を踏まえた、現在のオーストラリアでのプレーについては「新たな挑戦(へのスタート)を切っていますので、これまでW杯だけを目指してきたサッカー選手の道とは違う挑戦を、いまメルボルン・ビクトリーの中で、日々のトレーニングからトライしている」と語り、「そのゴールは何度も話している、2020年の(東京)オリンピック。まだ僕も手探りの部分がありますけど、手応えを、成長を感じながら楽しく、日々挑戦している」と、地元開催の五輪へのオーバーエイジ枠での挑戦をあらためてアピールした。
昨年、豪雨災害に遭った広島への思いについて「明日は先ほども言ったように、いろいろな思いを込めて…たまにしか帰ってこない日本なので…気持ちを少し上乗せしてプレーしたいと思っています」と語って会見を締めくくった本田。クラブの選手としては名古屋時代の2007年以来、実に12年ぶりとなる日本でのプレーで、どんな働きを見せるのか注目される。
取材・写真◎石倉利英