上写真=負傷した遠藤航に代わって緊急出場した塩谷司だが、しっかりと役割をこなした(写真◎福地和男)

 準決勝のイラン戦に、日本は3-0で快勝した。塩谷司はこの勝利を仲間と喜びつつも、他の誰もが持ちえない特別な感情を同時に抱いていたかもしれない。所属するアルアインのホームスタジアム『ハッザ・ビン・ザイード・スタジアム』で、日本代表の一員として歴史的な勝利を味わうことになったからだ。それは塩谷一人しか感じることのできない喜びだった。

最善の準備をして決勝へ

 昨年12月にUAEのアルアインでクラブワールドカップ決勝を経験し、今回のアジアカップには大会初戦の直前に緊急招集されて、今度はアジアカップ決勝にたどり着いた。これほど劇的な1カ月間を過ごすことになるとは、数カ月前の塩谷には想像できなかっただろう。

 イラン戦では60分から途中出場。遠藤航の負傷により、急きょピッチに入ることになった。インテンシティーが高く、テンションも高いゲームの中へ、途中から、しかも急にピッチに入るのは難しいもの。「(ウォーミング)アップ不足でしたけど、時間もそんなに多くなかったんで、どうにかなるだろうと」。そう本人は語ったが、塩谷はピッチに登場した瞬間から、実にスムーズにゲームに入り、球際で戦い、ボールを回していった。

 そのあたりは勝手知ったるスタジアムでのプレーということもさることながら、2017年6月にアルアインに移籍して以降、UAEの地でしっかり自身の技と心を磨いてきた賜物だろう。慌てず、動じず、そのプレーは常に落ち着ていた。

 遠藤の負傷の程度もあるが、決勝で先発する可能性も十分にある。そのことについて問われると、「まだどうなるか分からないですけど、監督がもし自分をスタートに選ぶんだったら、自分ができることを、最善の準備をしたいと思います」と話した。つまりは、準備ができている。

 本日、23時から行なわれる準決勝のもう1試合、カタール対UAEの勝者と日本は2月1日にファイナルを戦う。そこで塩谷に聞いた。やはりUAEと対戦したいか、と。

「それはもちろん。チームメイトもいますし。だから明日(29日)は彼らを応援したいと思います」

 UAEと対戦することになれば、それは現UAE監督で、元日本代表監督であるアルベルト・ザッケローニと日本チームが再会することになる。そして塩谷にとっては、普段はアルアインでともにプレーする多くのチームメイトと代表戦で戦うことになる。

 クラブワールドカップ決勝でレアル・マドリード相手にゴールを決めてから約1カ月あまり。クラブ最高峰の戦いから今度はアジア最強国を決める決勝へ、塩谷は戦う舞台を移した。しかも、アジアカップは大会の直前に出場が決まったという経緯がある。
 この1カ月の塩谷の歩みをシナリオにしても、あまりにも出来すぎていると言われてしまうかもしれない。それほど劇的と思える時間を、塩谷は過ごしてきた。ただこれらすべては、現実に起こっていることだ。いや、塩谷が起こしたことだ。

 塩谷司のドラマチックな1カ月間が、いよいよフィナーレを迎える。そこにはどんな結末が待っているのかーー。

取材◎佐藤 景 写真◎福地和男


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