上写真=引退会見で胸の内を明かす小笠原
写真◎サッカーマガジン
12月27日、鹿島アントラーズから小笠原満男の現役引退が発表された。翌日、引退会見が行なわれ、現役生活に幕を下ろした現在の心境を語った。
「もっと強い鹿島を作ってほしい」
日本人として史上最多となる17個ものタイトルを獲得し、鹿島の強さを支えてきた小笠原満男。突然の引退発表の翌日、カシマスタジアムで開かれた会見で、多くの報道陣を前に胸の内を明かした。
「(現役を退くことへの)葛藤はなかったですね。今のような立ち位置になったら辞めると決めていたので。自分はピッチに立って勝ちたいという思いがすごく強くて、それができなくなったら辞めると決めていた。(今年の)夏だったかな、ベンチ外が続いたときがあって、なんとなくそのときから、今年で最後という思いは、徐々に芽生えていきました。でも、その日が来ないように長く頑張ろうとやってきたし、チームのために最後までやり抜くべきだと思いました。
他のクラブでやりたいとは思いませんでした。だったら、俺は違う形でチームに恩返ししたい、という気持ちが強くなって。ここ(鹿島)で勝ってきたのが面白いし、タイトルを取ってきたのがやりがいでしたから。
取ったタイトルもあるけれど、取れなかったタイトルもたくさんあります。だから、悔しい思いばかりですね。自分の人生を振り返ると、悔しい、悔しい、と。そういう思いで突っ走ってきたというのはありますね。
(イタリア・メッシーナへの移籍は)ターニングポイントの一つだったことは間違いない。試合に出る、出ないの悔しさだったり、日本で当たり前のことが向こうで当たり前じゃなかったり、いろいろなものを見て、経験できました。(鹿島に)帰ってきたときには、それを見せなければいけない、チームに何か還元しなければいけないという気持ちだった。自分が変わろうと思ったきっかけでもあったと思います。
今度は(内田)篤人とかが帰ってきて、ヨーロッパで経験して、世界のレベルを伝えるために頑張っている。これからは残った人たちで、もっと、もっと強いアントラーズを作ってほしい」
小笠原は、時に笑みも交えながら、穏やかな表情で21年間の現役生活を振り返った。数々のタイトルを勝ち取ってきたが、何度も「悔しさ」という言葉を口にした。一つの勝利に満足することはない。その貪欲な姿勢が、鹿島に多くの栄光をもたらしたゆえんなのかもしれない。
取材◎小林康幸