上写真=引退セレモニーであいさつする森﨑。広島ひとすじのキャリアを過ごした
写真◎J.LEAGUE PHOTOS
今季限りでの現役引退を表明している広島MF森﨑和幸が、キャリア最後のホームゲームを戦った。第33節の名古屋戦でベンチ入りし、後半途中から出場。試合後には引退セレモニーが行われ、時折言葉を詰まらせながら、ファン・サポーターや周囲の仲間への感謝の言葉を綴った。
■2018年11月24日 J1リーグ第33節
広島 1-2 名古屋
得点者:(広)柏好文 (名)ジョー、小林裕紀
J1初優勝と同日の引退セレモニー
地元の広島で生まれ育ち、矢野FC-矢野中を経て広島ユースに進んだ森﨑は、99年11月のG大阪戦でJリーグデビューを果たした。当時ユース所属の高校3年生で、高校生でのJデビューはクラブ史上初めて。翌年から中心選手として活躍を続け、二度のJ2降格、慢性疲労症候群による数度の戦線離脱などの苦難がありながらも広島ひとすじでプレーし、2012年、13年、15年のJリーグ制覇に貢献した。
デビューから20年目の今季は、長期の戦線離脱もあってシーズン終盤まで出場機会がなく、11月3日の第31節・磐田戦で今季初出場。この日は今季2試合目の出場で、64分にMF川辺駿に代わって出場すると、スタジアムから大きな拍手が沸き起こった。
広島は36分に柏好文が決めて先制したものの、39分、44分と前半のうちに2失点して逆転を許していた。後半も思うようにチャンスを作れずにいたが、森﨑の登場とともに攻撃が活性化し、何度も名古屋ゴールに迫る。75分には現広島ユース所属の高校3年生で、9月にプロ契約をかわしたMF東俊希が、Jリーグデビューとなる交代出場。森﨑がプロデビューした後の2000年に生まれたユースの後輩との共演も見られた。
試合終盤にかけて広島の攻勢は続き、森﨑も持ち味の正確なつなぎに加え、普段は見せることが少ないドリブル突破などで局面を打開しようと試みた。しかし、残留争いの中で勝利への執念を見せる相手の堅守を崩せず、そのまま1-2でタイムアップ。広島はリーグ戦6連敗となり、森﨑の現役ホーム最終戦を勝利で飾ることはできなかった。
試合後の引退セレモニーであいさつに立った森﨑は、「ユースから数えて22年、プロになってからは19年。自分のキャリアを振り返れば、二度のJ2降格や、体調不良などで、何度もチームに迷惑をかけてきましたし、サポーターにもたくさん心配をかけました。でも、そのたびに大きな声援で、チームと僕を励まし、支え、助けていただいたサポーターの皆さんには、感謝の言葉しかありません」と、まずサポーターへの謝意を示した。
「6年前、サンフレッチェ広島がJ1初優勝を決めた同じ日の11月24日に、こうして引退セレモニーができるのも、サンフレッチェや皆さんとの運命を感じています」と、当日が思い出の日付であることを明かし、家族や夫人、子どもたちには「言葉では言い表せないほど感謝しています」と語った。2年前に現役を退いた双子の弟・浩司(現サンフレッチェ広島アンバサダー)や、少年時代から自分を指導してくれた歴代のスタッフへの思いも明かした。
その後、今後について「今シーズンをもって、僕はサンフレッチェ広島の選手ではなくなりますが、これからもサンフレッチェ広島は続いていきます。これまで以上にサンフレッチェ広島の応援をよろしくお願いします」と呼びかけた。最後に「僕にとってサンフレッチェ広島は、人生のすべてでした。広島に生まれてきて、本当によかったです。19年間、本当にありがとうございました」とあいさつを締めくくった。
その後は場内を一周し、長い時間をかけて花束やプレゼントを受け取りながら、サポーターとの別れを惜しんだ。この日の会場には福岡の駒野友一、名古屋の佐藤寿人をはじめ、かつてのチームメイトが数多く詰めかけており、ピッチ上で記念撮影をする場面も。広島に生まれ、広島でキャリアを全うしたレジェンドが、慣れ親しんだ広島のピッチに別れを告げた。
取材◎石倉利英 写真◎J.LEAGUE PHOTOS、石倉利英